確かにサラリーマンが酒を飲み、ホームレス不要論を説いたとしても、現実にホームレスに危害が及ぶわけではない。だが、何万人という人に影響を与えるインフルエンサーの発言が、

「何もしていない」

 と言えるのか?

 カルト教団の信者たちように、人を人とも思わない価値観を増殖させることに繋がってくるのではないだろうか。

大量の空き缶を運ぶホームレス
大量の空き缶を運ぶホームレス
【写真】差別発言を謝罪するDaiGo

 そもそも、彼らだって生きている人間であり、生計を立てる必要があるのだ。

 野宿生活をする人の多くは廃品回収で日銭を稼いで生活している。アルミ缶を集めて、業者に買い取ってもらうのだが、実はこれ過酷な肉体労働なのだ。

 何十キロもあるアルミ缶を抱えて10時間以上も動き回る。それでも稼ぎは3000円いくか、いかないか。でも、稼いだお金はすぐ食費に消えるし、毎日のように稼げるわけではない。

暴力を受け続けるホームレス

 炎天下では熱中症になるし、風が強い日は缶が飛ばされて仕事にならない。空き缶を集めていると「泥棒!!」とどやされ、警察を呼ばれることもある。

 DaiGo氏は、

「自分はホームレスを愛さない」

 動画の中でそのような言葉を繰り返し発言していたが、わざわざ宣言する意味はあるのだろうか? 

 だって、ホームレスが愛されていないことは、一目瞭然なのだから。

 高速道路の下にはホームレスが寝られないように突起状の石が敷かれ、ベンチの真ん中には横たわれないようにする肘かけが設置されている。これは建造物が本来の用途以外で使用されることを防ぐための『排除アート』と呼ばれるものだ。

 ホームレスを排除するのが主目的の『排除アート』も多く、今では街中のいたるところで見ることができる。テントを張ったり小屋を建てたりするのも難しい。警察などに強制的に撤去させられてしまうからだ。

 排除されるだけではない。多くのホームレスは理不尽な暴力を受けている。僕は20年以上ホームレスの取材をしているが、暴力を受けた話はなくならない。

「河川敷で寝ていたら、子どもたちに花火を打ち込まれて大やけどを負った」
「駅で寝ていたら卵をぶつけられた」
「地下街に続く階段で寝ていたら、上から自転車を投げつけられて大怪我した」

 などの話を彼らから聞いた。

 大阪では、

「知り合いのホームレスが、商店の前で寝ていたら頭を踏み割られて死んだ」

 と悲しそうに語るホームレスと会ったこともある。