「このような番組での野生動物の利用は不適切だと考えます」

 ニホンザルなどの霊長類を研究する神戸大学の清野未恵子准教授は今回のサルドッキリについてそう話す。

サル保有のウイルスが感染することも

「近年、ニホンザルによる農作物食害や家屋侵入など人間の生活エリアへの出没が相次いでメディアで取り上げられ、ニホンザルに対する“恐怖”や“嫌悪”といった感情を抱く方々がおられ、ニホンザルを捕獲・殺傷することを望む声があります。

 一方、信仰の対象とされ、大事にされてきた文化があります。ニホンザルとの適切な距離を保ってニホンザルも人間も住み続けられる社会を創ることが現代の日本人に課せられた課題です。

 ニホンザルが攻撃的であるかのような映像を用いると“ニホンザルは怖い、危険、危ない”といった印象を持たれてしまったり、特に農村など近くにニホンザルがすんでいるエリアにお住まいの方々は、映像のようにニホンザルが飛び蹴りするのではないかと勘違いされるかもしれません。ニホンザルに対する誤った認識を誘発してしまう点が問題だと思います」(清野准教授、以下同)

 また、ニホンザルには特有の“ウイルス”があるという。

『ドッキリGP』で放送された“猿ドン”が問題視されている(写真はイメージです)
『ドッキリGP』で放送された“猿ドン”が問題視されている(写真はイメージです)
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ニホンザルは『Bウイルス』を保有しています。これはニホンザルが保有する分には問題はありませんが、人に感染すると、重い中枢神経感染症性疾患(Bウイルス病)を発症することがあります。

 猿回しのプロの方が監修されているので問題はないかもしれませんが、“知らない人間に飛びつく”という行為をする流れでサルの攻撃性が刺激され、噛んだりする行為が引き起こされたとすれば、ウイルスに感染する危険もあるかと思います。

 躾の行き届いたニホンザルを今回のイベントに用いていると思われますが、ニホンザルが予想もしない行動をとる可能性もあり、撮影に際して、(調教師であるプロは)不安な気持ちもあったかと思います」