子どもに押してもらうのは危険!
運動不足で筋肉や関節の柔軟性が低下している人や、もともと関節の硬い男性などは、自分ひとりで伸ばしにくいと思い、家族などに押してもらってストレッチを行うケースもある。しかし、これが関節を痛める原因になりかねないという。
「身体の構造を理解していない人がストレッチで相手の身体を押すと、必要以上に強い力を加えがち。関節に痛みを感じたときには筋肉が伸び切っていて手遅れ、なんてことにもなりかねないため注意が必要です」
身体が硬くても自力で可動域は十分広げられるため、必ずしも押してもらう必要はない。
「本来はプロトレーナーなどスキルがある人にお願いするのが理想ですが、家族などに頼む場合は、しっかりコミュニケーションをとりながら、加減して少しずつ力を加えてもらいましょう」
他人の力を借りたストレッチというのは、実は危険なのだ。
180度の開脚は構造上ムリ!
2016年に出版された開脚をすすめる本がベストセラーになったこともあり、女性の間で180度の開脚を目指す人が増加した。しかし、無理な開脚は大きな危険を生むと坂詰さんは警鐘を鳴らす。
「そもそも120度以上の開脚は、日常生活や運動でも必要がなく、ほとんど無意味です。しかも人間の動作は基本的に前後方向なので、左右の動きやひねりに対しては関節の可動範囲が狭く、無理な開脚は危険。特に女性は関節が柔らかく、180度の開脚など無理なストレッチは脱臼のおそれもあり、大ケガにつながりかねません」
股関節が180度開くのは柔軟性があるからというより、無理な訓練の結果。ヨガの先生やアスリートでも股関節を痛めることが少なくないという。無意味な憧れで大ケガ、なんてことは避けたい。
意識すると筋肉は伸びない
筋トレでは鍛える筋肉を意識するようにとよくいうが、ストレッチでは逆効果になるという。
「筋肉を意識すると、筋力は高まりますが、そのぶん力が入って伸ばしにくくなります。むしろ、ぼーっとしながら身体の力を抜いた状態でストレッチを行うほうがずっと効果的です」
そもそも筋肉は収縮することはできるが、それ自体に伸びる機能はない。意識しても伸びるわけではないのだ。
寝起きはストレッチに最も向かない
朝イチでストレッチ、と聞くと健康的な感じがするが、実は筋肉を伸ばす意味では、体温の低い起床後は最も非効率な時間帯だという。
「筋肉には体温を作り出すという役割もあるので、筋線維は寒いと熱を生みだそうと収縮するのですが、温まると脱力して伸びやすくなります。そのため、ストレッチは自律神経の働きで体温が高まる16時前後がベストのタイミングです」
ほかにも、通勤・通学・掃除後なども体温が上昇しやすいので効果的。もちろん入浴後に行うのもおすすめだ。
ただし、朝イチのストレッチは、心身を覚醒させ、消費エネルギーを増やす効果があるため、まったくの無意味というわけではない。目的によって使い分けるのがよさそうだ。