子どもたちが強く感じていること
他方で後者、「親の経済力など、家庭環境によって子どもの人生が決まる」という意味合いについて。これもやはり、あるよね、と思います。
ひと昔前と比べ、最近は奨学金など修学支援の制度が充実し、世帯収入にかかわらず進学しやすくなった面はありますが、進学先や就職先にまで目を向けると、やはり「親ガチャ」で人生が決まる部分が大きいことを、子どもたちは強く感じているようです。
以前取材したある学生さんは、誰もが知る一流大学に通っていましたが、それでも「周囲の大人がしかるべきタイミングで情報を与えてくれなければ、子どもはよりよい進学(東大)をあきらめなければならない」と語っていたことが印象的です。
また別のある学生さんは、中学高校時代、特別支援学校に通っていました。ずっと「勉強をしたい」と願っていましたが、親にはなかなか理解されなかったそう。「もし、もう少しいい大学に入れていたら、今よりも自分に自信がもてていたかもしれないと思う」と話していたことも、忘れられません。
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「親ガチャというが、子ガチャだってある」という声も見かけますが、それは話の次元が違います。子どもがこの世に生まれてくる原因は、間違いなく親にあります。自分の意思で生まれようと思って生まれてくる子どもなど、一人もいません。その意味で「親ガチャ」と「子ガチャ」を並列に語るのは的外れでしょう。
「親ガチャといって親や家庭環境のせいにするな」という声もありますが、その言葉がまさに子どもたちを追い詰めてきました。もちろん、環境にかかわらず努力することは大切ですが、そんなことは子どもたちもわかり過ぎるほどわかって、努力を重ねているのです。
「ガチャ」というゲーム用語を使うことへの批判もあるようですが、軽い言葉だからこそ、重い現実を広く伝えられる面もあるでしょう。
耳が痛いと思う親もいるでしょうが、「子どもが苦しく感じるよりはマシ」と思ってはもらえないものでしょうか。
大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。出版社、編集プロダクションを経て、現在はノンフィクションライターとして活動。そのほか、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。多様な家族の形を見つめる著書『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(ともに太郎次郎社エディタス)など多数出版。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。