“コロナだから”と簡素にしすぎない
コロナ禍で人を集めるのが難しい今、一般葬のさらなる減少が予測されるが、
「安いからと安易に選ぶと“本当にこれでよかったのだろうか”という気持ちを後々まで引きずってしまうおそれがある」
と久保田さんは懸念する。
というのも、直葬の場合、親族が集まるのは火葬炉の前で、故人とのお別れの時間も5~10分ほどと非常に短い。
「経済的な問題や故人の遺志などポリシーがあるなら仕方ないのですが、コロナだからと単に簡素に走るのは危険です。まずは式の特性を把握することが大切」
と是枝さんも注意を促す。熟慮すべきは直葬だけではない。限られた親族で小規模な葬儀をした結果、かえって面倒が生じるケースもある。
「葬儀に参列できなかった方が後日お焼香をあげさせてほしいと自宅に訪ねてくることが多々ある。そうなるとお茶を飲みつつ故人の思い出を語り合うことになります。なかには感情的になり、何で式に呼んでくれなかったんだと詰め寄るような人もいる。
濃厚接触の危険もあり、それが続くと心身ともに遺族の負担は大きくなります。ならばコロナ禍でもできるだけ一般葬に近い形で式をしておいたほうがいいこともある」(是枝さん)
しかしコロナ感染症で死亡した場合、葬儀は直葬に限られる。看取りは叶わず、故人と会えるのは火葬後、お骨になってから。その現実を知らしめたのが昨春、コロナで亡くなった志村けんさんのニュースで、世に大きな衝撃をもたらした。
「コロナで亡くなった方の火葬場の対応は志村さんのときから変わらず、遺族も火葬場には入れません。火葬場に向かう霊柩車を外から見送る形でお別れをすることになります」(是枝さん)
直近ではコロナ死亡者のエンバーミング(防腐処理)を請け負う葬儀社も登場し、故人の顔を最後に拝める環境も整いつつあるが、
「エンバーミングをするには費用が嵩みます。それでなくともコロナで亡くなった方の葬儀は消毒費用や火葬待ちの保管費用などが加わるので通常の約3割増しになってしまう」(是枝さん)