パンデミックの勃発から1年半余りがたった今、当初手探りだった葬儀の現場もさまざまな対策が講じられるようになった。マスクの着用、消毒のほか、大きめの式場を押さえてソーシャルディスタンスを保ち席を配置するといった工夫もそのひとつ。

 さらに通夜振る舞いにも配慮がなされ、大勢で囲むオードブルではなく、ひとりひとりに料理を提供するお膳スタイルや、持ち帰り用の折り詰めの登場、選べるカタログギフトを用意するといった取り組みがさらに増えてきた。

 また新たな試みとして広まりつつあるのが、オンラインの導入だ。

「少しずつですが、事前の打ち合わせやご相談、弔花やお香典の手配にオンラインを活用する動きがあります」(久保田さん)

 葬儀自体も従来の様式にとらわれず、より柔軟な式があげられるようになった。是枝さんも「お通夜をせずとも葬儀の方法はいろいろある」と語り、葬儀社経営の立場から個々のニーズに寄り添った提案を行っているという。

「東京の式場は多くが2日単位で価格が決まっています。コンパクトな式にしたいなら、1日目は近親者少数で集まり、2日目はお孫さんなどを呼んでお見送りしてもいい。

 また直葬だとお別れの時間が限られてしまうが、別にお別れのできる場所を借りれば故人とゆっくり過ごせる。それにかかる費用は3万円程度から。簡易ながら無宗教の1日葬ができます。

 コロナだからとシンプルにしすぎて別の苦労を生まないためにも、リスクを踏まえた取捨選択をおすすめしたい」(是枝さん)

コロナ患者遺族の戸惑い

 コロナ感染症による死亡者数は9月現在1万7千人余り。現場では実際にコロナ患者の遺族からの問い合わせが増え、その多くが直葬への戸惑いを口にするという。

コロナで亡くなると直葬を選ばざるをえない場合が多いので、最期に立ち会えなかったぶん、遺族としては火葬するだけで終わらせていいのだろうかという気持ちがあるようです。

 人を集めずお別れの場をどう設けるか、遺族のグリーフサポート(※大切な人を亡くした悲しみからの回復をサポートする取り組み)をどうするかが課題になっている」(久保田さん)