あれもこれもと手を出すのは失敗のもと
では、シニア起業を成功させるコツは何だろうか。
「女性の中には、事業内容に関してコロコロ気が変わる方がいます。やりたいことが多いあまり、関連性のない事業を2〜3立ち上げても、うまくいきません」
事業をやるなら『移り気』は禁物。公的機関や民間の企業支援サービスを利用すれば、事業計画のサポートなど、起業までに必要な支援が受けられる。プロの手を借りてしっかりプランを立てよう。
「女性は周囲を巻き込んで協力を得る力のある方が多いです。シニア世代の女性起業家の中には、年収数百万円という方もいますよ」
人生の後半戦に一花咲かせてみてはどうだろうか。
次では、主婦から夢を叶えた2人のシニア女性起業家に話を聞いた。
主婦から起業! お金をかけずに成功したシニア女性起業家たち
元主婦&50代後半から起業し、お金と生きがいを手に入れた人たち。その仕事を選んだきっかけや、普通の主婦でも成功できた理由とは?
看護師経験と趣味が形になって
ユニバーサルかぎ針「あみ〜ちぇ」を製造・販売
平田さんは埼玉県在住、看護師の経験もある元専業主婦、転機は45歳を過ぎたころ。
「子どもが中学生になって、ふと自分の人生について考えました。趣味だった編み物を本格的に学ぼうと、家族を説得して専門学校に通学したんです」
その後は自宅で編み物教室を開き、日本手芸普及協会の手編み師範資格も取得した。
自由に手が動かなくても編み物を楽しんでほしい
そんなとき友人から「昔編み物を楽しんだ高齢者に編み物を教えてほしい」と依頼される。
「脳卒中後に麻痺が残った方や認知症の方など、片手しか使えないけれど編み物をしたいという方が意外と多かった」
でも編み物は片手ではできない。補助器具も売っていなかった。
「看護師だった経験も活かして私が作ろう! と。これが起業のきっかけです」
しかし事業の立て方はわからないしお金もない……。そこでさいたま市の創業支援窓口に行き、ゼロから教えてもらった。県が開催する創業スクールや各種ものづくりフェアに参加して情報収集。国の創業補助金を活用して、試作メーカーとともに試作・モニタリングを開始、「ユニバーサルかぎ針」が完成する。'15年に56歳で起業に成功。ゼロスタートだったから踏み出せた、と平田さんは言う。
夫を失った悲しみとその言葉が起業の原動力に
この奮闘の陰には、最愛の夫との悲しい別れもあった。
「私が54歳のときに夫が病気で他界。『おまえしかできない事業を世の中に役立てて』という言葉に背中を押されました」
平均年商は180万〜200万円。年金の足しになるのがうれしい、と平田さん。最後にこれからシニア起業する方へのアドバイスを聞いた。
「やりたいことを言葉にすれば応援してくれる人が現れる。自治体の支援機関を活用して足を踏み出しては」