独立が功を奏した元SMAP
肉体的な角度から役作りに臨む男優と、役に憑依して入り込んでいく女優。ひと言で役者といっても、男女でアプローチの仕方はまったく違う。そういえば、大竹しのぶは20代のころにミュージカル『にんじん』で14歳の少年の役を演じ、入り込みすぎて生理が止まったことがあるらしい。
岩下志麻は映画『極道の妻たち』で台詞覚えをしている際、友人からかかってきた電話に「わてや!」と答えてしまったそうだ。どちらも、役に憑依する女優らしいエピソードである。
一方、大河ドラマ『八代将軍吉宗』('95年・NHK)で徳川家重を演じた中村梅雀は家重が運動機能と言語機能に障害があったことを知り、ろう学校を回ったという。
また、お家騒動で意気消沈した家重を演じる際、数日眠らずに心身ともに弱った状態を作り出したとか。男優ならではのアプローチの仕方といえるだろう。
“江戸時代にタイムスリップする寂しさ”を理解するため、携帯電話を持たずにイギリスへ飛び、アパートで3か月ひとり暮らしをしてから『JIN―仁―』('11年・TBS系)の撮影に臨んだという大沢たかおも然りだ。ただ、男優にも例外がいる。
「水谷豊には人たらしの才能がある。パーティーなんかで会ったとき、今や大俳優なのにスタッフみたいにいろいろやってくれる。普段からコロコロ表情を変えるんですよ」(竹山さん)
どちらかといえば、水谷は女優タイプに近い。肉体的なアプローチは特に見られないのに、『傷だらけの天使』('74年・日本テレビ系)から『相棒』('00年・テレビ朝日系)まで幅広い役柄を自由自在に演じられてきたのは、その気質が理由か?
また、竹山さんが役者魂を感じ、称賛しているのはあの元アイドルたちだ。
「草なぎ剛さんと稲垣吾郎さんは、いい役者ですよね。アイドルであり、歌手でもあったから、みんなが求める存在になることに慣れてきているためか、制作側が求める像になることにためらいがないのでしょう。複雑な役を演じているときの彼らはとても生き生きとして見えます。独立したことが功を奏したのではないでしょうか」
映画『天国と地獄』で、画面に映り込む民家を気にした黒澤明がその家を取り壊したというエピソードは映画界に今も伝わる武勇伝である。