日経BPの総合研究所上席研究員・品田英雄氏に、“デビューが重なった理由”を聞くと「あくまでも私の考えですが」と前置きしつつ分析する。
「まず一つ言えるのが、オーディション番組から出てきたグループの結成までの過程を見ていただければわかるように、実際にはたくさんいた候補者の中から勝ち抜いた人物が残される形になっています。最近のビジネス界で注目されている言葉に“プロセスエコノミー”があります。
プロセス(過程)自体が魅力的であり、お金を生むことがわかってきています。単に出来上がった商品を販売するのではなく、実際に作る過程をすべて見せて盛り上げることで、消費者の消費意欲を高めるビジネスモデルです」
オーディションを番組として制作し、ともに選考過程の課題曲をiTunesなどの音楽配信サービスやオフィシャルサイトなどで配信。また『BE:FIRST』はYouTubeにもパフォーマンス動画を公開するなど、プロセスの段階でビジネスにしていたのは明らか。
「そしてもう一つ。最近のエンターテイメントビジネスで外せないのが、特に若い人たちが応援する意味で使う“推し”です。“推し”の対象を自分で見つけて一生懸命に応援することが、グループアーティストの楽しみ方の一つとして確立され、どんどん広がってきています」(品田氏)
負けたくないファンの“競争ゲーム”
番組で候補者のルックスや歌唱力、ダンス、はたまた性格やキャラが映し出されることで感情移入もしやすくなり、特定のお気に入りのメンバーである“推しメン”ができる。そんなメンバーが審査を勝ち抜いていくことはうれしく、さらに応援するというワケだ。
「この2点を踏まえて、デビュー日が重なることがどういうことか。今までの“推し”は、グループ内で競い合っている特定のメンバーに対して向けていたのが、ところが実は外には別の競争相手がいたことになります。良く言えば“さらなる推しがいがある”。逆に言うと“ライバルに負けてはいられない”と、ファンの人たちは推しグループをさらに応援するようになります。
デビュー日が重なるのは困惑する出来事ではありますが、一方でやりがいのある競争ゲームになるというわけです。これをマネジメント側は、売り出し方として考えていたのかな、と思いますね」(品田氏)