スポーツライターの飯山満さんは、新庄のパフォーマンス力に太鼓判を押す。
「打者がコールされてからバッターボックスに入るまで球場には曲が流れますが、現役時代の新庄さんは、そのリハーサルがしたいと言ったそうです。どのあたりで素振りをして、どんなしぐさでどのタイミングでボックスに入るかを、すべて計算していたんですよ。そして、観客が彼の狙いどおりに盛り上がりを見せる。当時スタンドで見ていた球団の上層部の方々は“新庄は天才だ”と話していました」
“魅せる”ことにおいて、右に出るものはいなかった。しかし、そのために練習の時間を浪費していたかというと、そうではない。
「スパイダーマンや自分の顔を模した覆面をかぶりノックに参加して球場を盛り上げたこともありましたが、実はその前にしっかりと練習をすませていたんです」(飯山さん)
パフォーマンスのみならず、野球に対する姿勢においても球団から高く評価されていた。
「日本ハムの前GMで今後も本部長を務める吉村浩さんは、実はかなり昔から新庄さんのことを高く買っていたんです。彼がメジャーリーグに挑戦した2001年、吉村さんはデトロイト・タイガースのGM補佐を務めていました。おちゃらけたイメージがあった新庄さんですが、野球に対する熱心な姿勢を吉村さんは見抜き“彼がこれから成し遂げようとしていることは、素晴らしいことです”と口にしていました」(スポーツライターの梅田香子さん)
“戦友”たちが明かす新庄の素顔
関係者を魅了していた真摯な姿勢。彼のすごさを間近で見てきたのが、かつてのチームメートたちだ。1992年、当時阪神タイガースに所属していた新庄と2人で獅子奮迅の活躍を見せ“亀新フィーバー”を巻き起こした亀山つとむ氏が振り返る。
「目立ちたがり屋だけど守備の頭の使い方はすごくて、ポジショニングひとつでもかなり研究してましたね。普通は努力もアピールしたくなるものですが、彼は逆。“サラッとこなすのがプロだと思うんです”と言ってました。“ジーンズがはけなくなるから筋トレはしない”なんて発言もありましたが、陰ではしっかりやってましたよ(笑)」
監督としても、いい意味で予想を裏切ってくれることを期待せずにはいられない。
「演出に力を入れるでしょうし、野球でも相手の監督が予想できないようなことをしてくれるんじゃないかな。バリ島にいた彼が抜擢されること自体、そのすごさを物語っていますよね。10年以上野球から離れていた人が監督に就任するなんて、普通じゃありえませんからね」(亀山氏)