これまで、日本を舞台にした映画はたくさんありましたが、私たちから見て「??」という描写があったことも事実。サムライやアニメなどでリスペクトされているかと思いきや、海外事情に詳しい人々によると日本に対する価値観は緩やかにしか変わっていないといいます。そのうえ、間違った日本観を発信しているのは、当の日本だという見方も……。世界市場の中心であるハリウッドと、そこにおける日本の実際の立場を紹介します!
ハリウッドが抱く日本人像は記号的
ジョニー・デップが主演を務める映画『MINAMATA』が、9月23日から全国公開された。日本における四大公害病のひとつである水俣病。その背景や事実を世界に知らしめた写真家、W・ユージン・スミスをジョニー・デップが演じるという日本の出来事を題材とした映画なだけに、出演陣には真田広之、國村隼、浅野忠信といった日本人俳優もずらりと並ぶ。
振り返れば、日本を題材、あるいは舞台にしたハリウッド映画は少なくない。ところが、“フジヤマ・サムライ・ゲイシャ”に代表される一辺倒な日本人像、はたまた『ティファニーで朝食を』に登場したミッキー・ルーニー演じる日本人キャラ「ユニオシ」のような、日本を明らかに茶化したような要素など、「なんか違う……」といったモヤモヤ感があるのも事実。
『ブラック・レイン』で描かれる日本人像も、特殊な世界観の中に生きるYAKUZAの姿だったり、ハリウッドが抱く日本人像は記号的というか、ステレオタイプな気がしないでもない。
「求められているのは、寡黙な日本人ですね。感情表現がうまくなく、表情が読めない。『ラスト サムライ』で、渡辺謙さんが演じた役もそうでした」
こう説明するのは、『ラスト サムライ』、『ピンクパンサー2』、『硫黄島からの手紙』など超大作に出演する、日本人ハリウッド俳優の松崎悠希さん。
ロサンゼルスで人種的マイノリティー俳優として20年間ハリウッドを見てきた先駆者だからこそ、映画の中で描かれる日本人像の変化について一家言を持つ。
日本人はミステリアスで異質─。長きにわたり、その認識がハリウッドには根づいていたが、ある作品が日本人像に変化をもたらしたと話す。それが、全米で大人気ドラマとなった『HEROES/ヒーローズ』('06年)だ。
「マシ・オカさんの活躍によって、極端な言い方をすれば“笑ったり泣いたりする日本人像”が生まれました。また、日本人=テック関係に強いというイメージも『HEROES/ヒーローズ』の影響です。
それまで日本人が演じる役と言えば、寿司職人、日本兵、サラリーマン、サムライというように数えるほどしかなかった。僕が『ピンクパンサー2』で演じた役も、マシ・オカさんがいなければ絶対に生まれてないキャラクターです」(松崎さん、以下同)