ケース1 夫が大腸がんになったら 〜一家の大黒柱にがん宣告。収入が途絶えるも支えてくれる制度あり〜
家族の収入を支えていた夫ががんに。真っ先に心配になるのが夫の身体とわが家の家計。しかも、検査を進めると、がんは進行していることが発覚し、仕事をしばらく休むことに。手術で人工肛門にする可能性も出てきた……。
一定額以上は払わない「高額療養費制度」
がんになって、いちばんお金がかかるのが治療費だ。医療の進歩で選択肢が増えた分、中には超高額なものもある。
医療費が高額になったときに支えてくれるのがこの制度だ。年齢や所得に応じて1か月の自己負担額に上限が設けられ、それを超えた金額が後日戻ってくる。
「69歳以下で平均的な年収で3割負担の人の場合、1か月の上限は約8万~9万円。費用がかさんでも、上限が決まっているので安心です」
ただし、一部の高度な治療や差額ベッド代など対象にならないものもあるので要確認。さらに、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくと、自己負担額を超える金額を一時的に立て替える必要がなくなるので便利だ。誰でも利用できる制度なので、大腸がんに限らず、がんと診断されたら忘れずに申請しよう。
給与の一部がもらえる「傷病手当金」
がんで仕事を休んで給料がもらえないときや減額されたとき、お金が支給される制度。給与の3分の2が最長1年6か月間支給される。
「来年1月からより使いやすくなります。これまでは『支給開始日から1年6か月間』でしたが、今後は『通算して1年6か月』になるので、お金が必要なときにもらうことができるようになります」
この制度は、企業の健康保険が財源なので、会社員や公務員だけが対象となる。
がんで退職したらもらえる「失業給付」
がんで仕事を続けられなくなった人が、再就職までの間、一定のお金を受け取れる制度。雇用保険に加入していた年数に応じて支給される。
「失業給付と傷病手当金は同時に受給できません。傷病手当金は退職しても、一定の要件を満たせばもらい続けることができるので、まずそれを全額もらってから失業給付の申請をするといいですよ」
障害が残った場合の保障「障害年金」
人工肛門や、抗がん剤の副作用で起こるだるさやしびれなど、がんが原因で障害が残り仕事や生活がつらい……そんなときに助けになる制度がある。
「年金というと高齢者になってからのものと思われがちですが、この制度は65歳未満でも受け取ることができます」
もらえる金額は、加入している年金の種類や等級によって異なるが、厚生年金に加入して障害等級3級の場合、最低でも年に58万5700円受け取れる。日常生活や仕事が困難なら迷わず申請したい制度だ。
■もらえるお金メモ
高額療養費制度
①誰がもらえる?
→一定額以上の医療費がかかった人
②いくらもらえる?
→平均的な年収の人の場合8万7430円を超えた医療費
③申請先は?
→勤務先の健康保険組合、国民健康保険の場合は各自治体
傷病手当金
①誰がもらえる?
→会社員や公務員など健康保険の加入者
②いくらもらえる?
→給与の3分の2
③申請先は?
→健康保険組合、協会けんぽ
失業給付
①誰がもらえる?
→雇用保険に一定期間加入していた人
②いくらもらえる?
→年齢と賃金日額に応じた額の約5~8割
③申請先は?
→ハローワーク
障害年金
①誰がもらえる?
→障害等級1~3級に該当し、公的年金に加入して、保険料の納付要件を満たす人
②いくらもらえる?
→年58万5700円(厚生年金に加入、障害等級3級の場合)
③申請先は?
→各自治体