相続のルールを激変させる動きが加速している。早ければ2022年4月から、年間110万円までに定められた「生前贈与」の非課税枠が廃止されるかもしれないのだ。タイムリミットが迫る節税対策の方法と岸田内閣が目論む増税の行方を検証!

相続税のルールが変わるかも

 近年、相続税の対象になる人が増えているのをご存じだろうか。かつては相続税がかからない金額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったのが、2015年から「3000万円+600万円×法定相続人数」までにダウン。これにより、亡くなった人のうち4%程度しかいなかった相続税を払う人が、8%程度と倍増。地価の高い東京圏では約16%の人が対象になっているのだ。

“相続税なんて、お金持ちしか関係ない話でしょ”と思うかもしれないが、都会の一戸建てを相続した人なども対象となることが増え、遺族が困惑することもままあるという。そのため節税対策として、元気なうちに少しずつ財産を配偶者や子に渡す「生前贈与」を行う人も数多くいる。

 そんな中、気になるのが、相続税と贈与税が一体化されるという動き。

 昨年12月に自民・公明両党が公表した『令和3年度税制改正大綱』という資料には、こう記されている。

《相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める》

 む、難しい……。一体どういうこと?  税理士の西原憲一さんに解説してもらった。

「相続税と贈与税の一体化が進めば、多くの専門家が『暦年贈与』の非課税枠が廃止されるとみています」

 暦年贈与とは、年間110万円以下であれば贈与税が非課税になる仕組みを利用し、毎年行う生前贈与の方法。

「これを使って、多くの人が非課税枠の範囲内で生前贈与を繰り返し、相続税がかかる財産を減らし、節税対策をしてきました。しかし制度が変わると、この方法が使えなくなります」(西原さん、以下同)

 しかもそのXデーは、間近に迫っているおそれもあるという。

「今年12月に『令和4年税制改正大綱』が公表される予定ですが、そこで具体的な時期や内容が示されるかもしれません。そうなれば、最速で来年4月には改正がスタートする可能性さえあります」