集まった署名と大学の“回答”
京大大学院を卒業した雨宮愛さんも在学中に保健診療所を利用した1人だ。彼女は在学中、ネットの京大に関する掲示板などで容姿に対する罵詈雑言など多くの誹謗中傷を受けていたという。
「SNSで反論していたのですが、それに対し、“京大のブランド価値を下げている”などと言われ、教授や大学院の院長に呼び出されました。心配した教授に受診をすすめられ、保健診療所を受診しました。そこで医師に何も問題はないと診断してもらったことがすごく大きかった。教授も、保健診療所にて医師のお墨付きを得たことに安心したのか態度が軟化し、ネットでの誹謗中傷問題解決に向けた話し合いの席でも、円満に協議が進むようになりました。外部の診断だったら信頼されていなかったと思います」
廃止の通達は昨年12月1日。『存続を求める会』は、6日に存続を求める要求書とその時点で1100筆が集まった署名を大学側に提出した(署名は現在、約4400筆)。7日にも見直しを求める要請を総長あてに送付。大学側からの返答は一切なかったが、8日に保健診療所について追加の通達がなされた。“1日の廃止通知にはなかった”廃止理由がはじめて加えられた。利用者の減少だ。
「利用者が減少しているといいますが、そもそもコロナによって大学に通っている学生が少なくなっているという状況があります」(駒形さん)
大学側は、“メンタルの不調でカウンセリングルームを訪れる学生は増加”ということも廃止理由に挙げている。
「カウンセリングルームで診るのはあくまでカウンセラーの方です。保健診療所は医師免許を持った京大の教授が診察をしてくれるので、全然意味が違うと考えます。もちろんカウンセラーさんもありがたい存在ではありますが」(前出・三浦さん)
保健診療所は『健康管理室』と名前を変えた施設となると通知されている。代替施設になりえないのか。
「保健診療所は100年の歴史があり、先輩方の努力の賜物で充実した設備のある施設。長い時間をかけて学生や職員のニーズに合うように育てられてきたものです。それが今回の診療の終了で、保健管理施設としておそらく法律の最低限のレベルまで落とされると予想されます」(駒形さん)