告発されなきゃいけない人がいる

対談する吉田豪と石川優実
対談する吉田豪と石川優実
【写真】対談する石川優実と吉田豪

吉田 ボクは、空気を読めない人たちへの憧れがあるんですよ。「うわっ、ここでそれができるんだ」と驚かされる。ボクだったら、よっぽど腹をくくらないとできないことがナチュラルにできちゃう人。たぶん、石川さんも腹をくくらないとできない人だと思うんですけど。

石川 そうですね。だから、どちらでもいいんですよね、きっと。その人が、その人らしくいられればいいんじゃないかなと思います。

吉田 そういうことを書いている本なんですよね。各自が好きにやればいい。人に迷惑をかけない限り、ご自由にどうぞっていう。

石川 そう、ご自由にどうぞっていう本ですね。この本を読んでくださった率直な感想を教えてください。

吉田 石川さんは大変な役割だと思いますよ。そもそもの#KuTooに関しても、身体に負担の少ない好きな靴を履けるようにしたいっていうだけのことで、誰にも何かを無理強いしているわけじゃないのに、そういうふうに思われて、叩かれ続けて。

石川 どうして無理強いしていることにされるんですかね? そういうことになってますよね、なんか。

吉田 石川さんには批判が多いということはもちろん存じ上げていて、ボクのファンのなかにも嫌いな人がいるのはわかっているんですけど、ただ、そういう人たちに言ったんですよ。とりあえず見てくださいって。ボクが石川さんをインタビューしたときのTwitterとか、ついてくるクソリプの数が尋常じゃなくて、毎日これが続くなら、それは腹も立つだろうし、病むのも当たり前だって思う(笑)。

石川 ありがとうございます。

吉田 石川さんのつぶやきは、昔いくつかリツイートしていたんですよね。根本敬を読んだ話とか(笑)。コアマガジンの仕事で、読まされたんですよね。そういう、らしくない部分を拡散してようと思って。

石川 懐かしいな(笑)。2017年に書いた#MeTooの記事を、豪さんがリツイートしてくださって。そこにいたる前は、フェミニズムという言葉も知らなかった。そのときの私が読んでわかる本を書きたいと思ったんですよね。

吉田 グラビアアイドルが事務所や悪い大人に酷い目にあわされている案件は、ボクも常に拡散し続けていて。石川さんのときもその一環だったんです。

石川 豪さんが拡散してくださったおかげで、本当に広がりました。グラビアをやっているときは当たり前すぎて、こういうものなんだと思っていました。本当は当時から傷ついていたし、犯罪の被害を受けたのに、私も自分の出来事を軽く話すことがありました。#MeTooを書いたとき、グラビアや映画の世界からいったん離れようと思ったんです。自分で物事を考えて、発言できる立場になってから、役者をまたやりたいと思っていました。それで、今度、映画を作るんですよ。

吉田 それは思想的な要素も含めた映画なんですか?

石川 フェミニズム映画です。俳優の小原徳子ちゃんが脚本を書いてくれて、監督は吉田浩太さんで、フェミニズム映画を企画しています。当時の労働条件とか、当たり前のように監督が女の子に性的なことを求めていたこととか。

吉田 映画界もザラですよね。告発されなきゃいけないような人が、まだ普通に活動していますから。

石川 #MeTooって、映画界から出ているけど、やっぱり日本の映画業界って閉ざされている。私は、そんなにたくさんの現場に行ったわけではないですけど、やっぱりおかしな労働条件があるじゃないですか。それが全然、外には漏れないって思うんです。パーティーというか、変な飲み会がしょっちゅうあって、すごく苦手だった。そこで女の人は性的なことを求められたりするんです。

吉田 パワハラやセクハラを平気でやる人が権力者になって、そういうハラスメントに耐えられる人ばかりが業界に残り、その結果、まっとうに拒絶した人や耐えきれずに去った人の言葉があまり拾われないでいるのが問題だなと常々思います。