ジュリーはジュリーという生き方
そんな生き方に、どこか重なる曲がある。1979年の『カサブランカ・ダンディ』だ。昔のハリウッド俳優が演じた男っぽい世界観への憧れを歌ったもので、洋酒を口に含み、上に向かって噴き出すパフォーマンスでも話題になった。
往年のヒット曲をあまり歌いたがらない沢田が、今もちょくちょく歌う曲でもある。
サビでは「あんたの時代はよかった」という歌詞が繰り返されるが、それは彼自身の昔を懐かしむ気分にも通じるのではないか。
おそらく自分の美学へのこだわりが強すぎて、時代に媚びることができないのだろう。そのあたりを饒舌に語れば、同世代を中心に共感する人もかなりいるはずだ。
ただ、彼はそういう柄でもない。昨年、菅田将暉(28)とダブル主演した映画『キネマの神様』のパンフレットを見ても、コメントの分量は菅田の5分の1程度でしかない。
あの歌でいうところの「ピカピカの気障」「男のやせがまん」を貫いていたいから、泣きごとめいたことは語らないのである。
そのかわり、口に含んだ洋酒を噴き出すように、ときどき世間を驚かす。元祖ビジュアル系からカーネルおじさんへ。容姿は変わっても、ジュリーはジュリーなのだ。
PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)