エッセイストの小笠原洋子さんは、必要のないものを省き、シンプルな暮らしや生き方を追求している。
「ケチ上手」を楽しむ生活
「両親は倹約家でしたし、子どものころから貯金は好きでした」(小笠原さん、以下同)
27歳で京都の画廊に就職。給料がよく、収入の3割以上を預金に回していた。
「こんなことは長くは続かないと思っていました。30代半ばで私立美術館の学芸員に転職すると、給料は画廊の3分の1に。もともと勤め人は45歳まで、その後はフリーランスで好きなことをすると決めていたので、将来のお金に対する不安感は強くありました」
預金をもとに40代の初めには民間の個人年金にも加入。65歳から受け取り、70歳まで受給できるように設定した。
「てっきり自分は70歳くらいで死ぬだろうと思っていたんです(笑)。でも思いのほか長生きして60代後半になったとき、70代からは公的年金だけで暮らさなくてはいけないことに愕然としました」
さらに出費を抑えるため、身近にあるものをフル活用し、ケチを磨くようになる。
「生活の無駄を省き、気取らず心豊かに暮らすことが私にとっての幸せ。例えば私の住んでいるところはゴミ袋が有料なので、出すゴミの量をできるだけ減らし、袋代を節約。燃えるゴミは週1回、5リットルの袋に入れて出すだけです」
お金をかけない生活がおのずとエコな生活になっていることがおもしろいと話す。
現在の家賃の安い高齢者向け賃貸団地を終の棲家に選んだのは、周りに緑が豊かで街並みが気に入っているから。
「30歳を過ぎたころに土地を購入し、数年後にその土地を売却したお金で郊外の分譲団地を買いました。いちばん感じたのは、家を所有すれば固定資産税がかかってしまうという不満。ケチな私はそれを受け入れられず、その家を売って現在の団地に移りました」
部屋の間取りは3DK、家賃は5万5000円ほど。今の家に引っ越す際には不用な家具や服、食器などを思い切って処分した。
「所有しすぎることは結果的に無駄だと考えるようになりました。物が減ると片づけしやすくなり、生活空間がシンプルになります。新しい服はもう何十年も買っていません。その代わり着回しを楽しんでいます。昔の服や家族から譲り受けた服をリメイクするのも好きですね」
質素だけどおしゃれに、清々しく暮らす。それが小笠原さん理想の「ケチ上手」だ。
「1日のルーティンを繰り返すことで、無駄な時間やお金を省くことができます。不要な医療費はかけたくないので、健康のためにもルーティンは続けたい」
朝食は基本パン食に決めておけば余計な食材を買う必要がない。昼食はキッチン、夜はリビングと、食べる場所を変えて気分転換を図る。
「午後は買い物を兼ねて3~4時間散歩に出かけます。自治体の無料講座に申し込んで受講をすることも。ひとりでも暮らしを楽しむことは十分にできる。自分なりに充実した日々を楽しんでいます」