会心の演技で金メダルに輝いたのは、羽生の最大のライバルであり続けたアメリカのネイサン・チェン。
「ショートもフリーも完璧で、文句のつけどころがない。4回転アクセルの次に難しい4回転ルッツという武器をショートでもフリーでも跳び、その次に難しい4回転フリップをフリーでは2回入れていますから、得点力が別格です。それをいかんなく発揮し、さらに、ダンサーのごとく踊る。ジュニア時代からダンスに定評があり、突出したものがありました。踊れてジャンプが跳べて、今のネイサン選手のいちばんいいところを見せつけました」(佐野さん)
圧巻の金メダルに続き、銀メダルの鍵山優真も、世界にその存在をアピールした。
「ショートプログラムで自己ベストを更新して2位につけると、フリーでもミスを最小限に滑りきりました。得点が発表されるキス・アンド・クライで、父でコーチの正和さんと喜びを爆発させる姿も話題になりました。羽生選手からは“本当によく頑張ったね”という言葉をかけられたといいます」(前出・スポーツ紙記者)
前出の佐野さんも、その滑りを高く評価する。
「フィギュアスケートの基本をきちんと積み上げていて、ある意味、すでに完成されています。それは、父譲りのひざの柔らかさがつくり上げていると思います。なめらかに滑っていて、ジャンプを跳んだ後の流れもきれい。それを、ひざで調整しているんです」
試合後には、“演技やステップなども評価されるオールラウンダーになりたい”と話した。そのために鍵山は、父以外からも教えを受けていた。
「2020年からは、浅田真央さんらを担当したローリー・ニコル氏から振り付けを学んでいます。そして、表現力に定評のある鈴木明子氏にもアドバイスをもらいながら、演技を磨いています」(スケート連盟関係者)
フィギュア界を担う宇野と鍵山
その努力が実った銀メダルを、鍵山が通う『星槎国際高校横浜』スケート部監督の松下清喜先生も称賛する。
「表彰台に乗ることができて、本当に素晴らしいと思います。とにかく“これからも頑張ってね”という思いです。次にタイトルを獲ったら“松下先生のおかげ”って言ってほしいかな(笑)。あとは、卒業のために試験を受けてもらうだけです(笑)」
その鍵山の存在がモチベーションだったと話すのが、銅メダルに輝いた宇野昌磨だ。
「初出場だった平昌五輪では羽生選手に続く銀メダルでした。北京五輪までの4年間、コーチが不在で調子が落ち込んだ時期もありましたが、ステファン・ランビエールコーチと出会って、さらなる成長を見せました」(前出・スポーツ紙記者)
宇野の祖父で画家の宇野藤雄さんは、孫の功績を喜びながらも、さらなる高みを見据えている。
「昌磨に会ったら、“よくやったね。これから、フィギュアを通して、自分の人格を高めることが仕事だよ”と伝えたいです。フィギュアスケートという芸術は、技術だけではだめ。人格を高めない限り、素晴らしいスケーターにはなれません。次は金メダルに向けて“ネイサン選手を超えられないならやめる”くらいの強い覚悟を持って頑張ってほしいです」