2月4日、高木さんと私たちが杉並区荻窪事務所に赴くと、受け取る側の杉並区荻窪事務所の人間がカウンターの向こうから出てこない。カウンター越しに要望書を渡す羽目になったが、渡す場面というものは写真に撮って「提出しました」とブログや新聞記事などに使う部分なので、私がスマホを構えると「所内での撮影禁止」と止められた。ならば、撮影可能な場所まで出てきてほしいと要望し、職員が渋々カウンターから出てきたのだが、聞けば相談係の係長だというではないか。

 申し入れや要望書というものは、その組織に対して行うものなので、そういう場面では、ふつう組織の管理職が出てくるものである。それなのに、所長でもなく、部長でも、課長ですらなく、管理職ですらない相談係の係長が押し出されてきたことに衝撃を受けた。

 これまでのように「言った、言わない」になるのが目に見えているため、高木さんや支援者たちの質問や要望、回答する係長の音声を撮るためにスマホを近づけた。

 顔に汗を流しながら、蚊の鳴くような声で答える係長が不憫だった。現場の人間がスケープゴートにされていると感じた。区民だけでなく、職員をも守らない組織なのだなと。

 高木さんと私たちが杉並区荻窪事務所に要望書を提出した2月4日の夜、東京都が通知を各自治体に向けて発出した。「申出書」を意識させる文面である。

本件を区議会で質された保健福祉部長の回答

 2月16日、ひわき岳議員(立憲)が一般質問で、

生活保護を申請した区民が親族に扶養照会をしないよう求める申出書を出したのに、区職員が受け取りを拒否したのはなぜか」

 と、一連の対応の問題点を挙げ、話し合いと謝罪を求めた。それに対し、保健福祉部長はこう答えた。

「抗議、要請書への対応についてですが、今回の事案において福祉事務所は誤った対応は行っておらず、本人から謝罪も求められておりませんので、特段の対応は考えておりません」

 2月4日に要望書を提出をし、謝罪を要求した際に、高木さん本人はその場にいたのにも関わらずのこの答弁は正直意味がわからない。

 要望書&謝罪要求の場に高木さん本人がいたことすら無視されているわけだが、その存在のみならず、高木さんの悲痛な訴えがほぼすべて否定されていることに愕然とする。 

 そして、筆者が高木さんから取材をして書いた記事(【実録】生活保護申請者の「扶養照会拒否の申出書」を受け取らず、照会を強行した杉並福祉事務所の冷酷)についても、「事実誤認、事実無根の箇所も多数あり、そのせいで福祉事務所を貶めるような匿名の誹謗中傷が一時集中し、電話での抗議もあった。福祉事務所は謂れのない非難に晒された」と、被害者意識丸出しである。これが公務員の姿かと驚きの連続だ。本当に謂れがないと思っておられるのなら、私たちを訴えてくれればいいと思うのだが。

 質問に対する喜多川保健福祉部長の回答を、是非動画で見てほしい。区民、市民一人ひとりの目で確認してほしい。何を感じるだろう。

【動画】杉並区議会録画配信 (本件に関するひわき区議の質問の動画13:45あたりから)

 保健福祉部長は本当に知らないのだろうか? それとも虚偽の報告をされているのだろうか? 組織ぐるみで立場の弱い人間を悪者にして隠蔽を図っているのだろうか? これは、杉並区の方針なのだろうか?

 ひわき区議が質問の中で述べた「(本件は)結局、扶養にはつながっていない。昨年の定例会で扶養照会について質問した際『扶養照会しても扶養につながる例はほとんどない』と区が答弁したのと同じ結果です。踏みにじられた申請者の尊厳と、病を抱え、高齢な家族が負った心理的な負担と引き換えに得たものは何だったのでしょうか?」という質問が重い。