金融機関での硬貨預け入れ手数料の導入や電子マネーの普及など逆風にさらされる『貯金箱』業界。これまで『10万円貯まる貯金箱シリーズ』などユニークなアイテムを開発してきたメーカーはこうした事態をどのように捉えているのだろう。担当者に話を聞いてみるとーー。
貯める楽しみ、貯まった喜びは健在!
今年1月17日、これまで無料だったゆうちょ銀行のATMでの『硬貨預け入れ手数料』がかかるようになった。手数料新設の直前には各地の郵便局で「無料のうちに硬貨を預け入れよう」と、利用者または顧客が長い列をつくった。
こうした硬貨預け入れ有料化の動きは大手金融機関などでもすでに導入されている。
硬貨預け入れ手数料だけでなく、電子マネーなどによるキャッシュレス決済の普及により、硬貨使用は年々減少していくとみられている。
中でも大きなあおりを受けているのは『貯金箱』のメーカーではないだろうか。
硬貨を使う機会が減れば、貯金箱で貯める機会も減る。メーカーはこの事態をどう受け止めているのか、貯金箱を開発・販売する、株式会社トイボックス(東京都)に直撃した!
「弊社はもともとおもちゃメーカーとして創業した会社ですが、事業の一環として貯金箱も作るようになりました」
同社の須藤栄司さんはそう話したうえで貯金箱事情について説明してくれた。
トイボックスは1966年創業、老舗おもちゃメーカーだ。だが、少子化やおもちゃ店の減少などに伴い、15年ほど前におもちゃ事業から撤退。現在はキャラクターアイテムやバラエティー雑貨の開発、販売にシフトしている。
おもちゃ開発と並行して展開していたのが「貯金箱」。特に500円玉で10万円、30万円、100万円が貯まる『●●万円貯まる貯金箱シリーズ』は1986年の発売以来注目を集めている、同社のロングセラー商品なのだ。
その開発秘話を尋ねると、
「当時は500円硬貨が発行された直後で、使える場所が限られていた。そこで行き場のない500円玉を貯金したらいいのではないか、とのアイデアから開発されたのがこの貯金箱シリーズでした」(須藤さん、以下同)
ほかにも同社ではさまざまな貯金箱を作ってきた。硬貨の金額ごとに分けて貯められる貯金箱や笑い袋付きで硬貨を入れたら笑いが起こるものなどユニークなアイテムも数多くあった。
「貯金箱の売り上げがいちばん高かったのは30年ほど前の'90年代です。当時は若い人たちの利用も多かったのですが、今は40代以上が多い。貯金箱は業界的に見て今後の成長アイテムではないですね」