日本じゅうの話題をさらった山口県阿武町で起きた給付金4630万円“誤送金”騒動。18日、山口県警はついに同町に住む田口翔容疑者(24)を逮捕した。自分の銀行口座に誤った入金があったことを知りながら、その金を別口座に振り替えたとして、『電子計算機使用詐欺罪』の疑いだった。田口容疑者は容疑を認めているというが……。
とある弁護士は首をかしげてこう話す。
「この法律は、1981年に三和銀行の女性行員が1億8000万円を、恋人に貢ぐためにオンライン端末を不正操作して起こした巨額横領・詐欺事件のあとにできたもの。端的にいえば、人ではなく、機械に詐欺を働いたという罪だ。だが、今回は誤送金だった金を別の自分の口座に移動しただけで、はたしてこの罪が成立するかどうかは疑わしい」
『占有離脱物横領罪』のほうが、より相応しい容疑なのではないかとも指摘。
「これは、他人の落とし物をネコババするなどに当てはまる罪だが、量刑が軽くて1年以下の懲役。悪質な容疑者に対する戒めのためにも、量刑が10年以下の懲役である『電子計算機使用詐欺罪』にしたのかもしれないが、成立しなくては元も子もない」(同弁護士、以下同)
他にも弁護士の視点で気になることがあるという。まずは金の返済について。4630万円が振り込まれた口座には、もう6万8000円しか残っていないとされている。30数回にわたって、別の口座に移し替えて、ネットカジノですべて使い果たしたと田口容疑者の弁護士が証言しているのだ。
万が一、これが事実だとしたら、先に役場が田口容疑者に対して不当利得返還請求を民事で提訴しているが、本来はこれも成立しなくなるという。
ギャンブルで失ったのなら返還義務はなかったが…
「不当利得返還というのは、正当ではない利益は返さなければならないということ。だが、この利益は生活費などの費用に使うと返済義務を負うのだが、ギャンブルで失ったものは返還しなくてもいいとなっている(現存利益がなくなるため)」
そんななか20日、田口容疑者の弁護士は「町の請求を認め、4630万円の返還義務を田口容疑者が認諾した」ことを伝えた。一方、弁護士費用など上乗せされた約500万円については裁判で争うという。
「容疑者は法律の知識がかなりある人間から不当利得返還の抜け道のアドバイスをもらっていたと考えている。だが、ここまで騒ぎが大きくなってしまい、町からの返還要求を受け入れざるを得ない状況に追い込まれたのではないか」