事業をやっていたら、借金があって当たり前

 よしえさん(47歳、仮名)は、さとるさん(58歳、仮名)と、真剣交際に入って1か月が経ちました。

「なるべく年の近い男性と結婚したい」

 婚活を始めた当初は、こう言っていたよしえさんですが、11歳上のさとるさんが年収1500万円だったことと、分譲マンションを所有しているというプロフィールにひかれて、お見合いをしました。そして、終えたときにこんなことを言っていました。

「ホテルラウンジの入口でお会いしたら、すごく紳士的に丁寧なご挨拶をしてくださいました。入口からお席までのエスコートの仕方、飲み物の注文の仕方、ウェイターに対する態度もスマート。見た目も若々しかったし、やっぱり人はお会いしてみないと、どんな方なのか、わかりませんね」

 こうして交際に入ると、デートも、これまで訪れたことがないようなお洒落な場所に連れていってくださったようです。車は、外国の高級車、私服もブランドものが多く、よしえさんは、なんだか自分がセレブになったような気持ちなっていました。

 そして、2か月後には、真剣交際に進みました。結婚の話を具体的にするようになり、あるとき現在住んでいるという分譲マンションの部屋に行きました。ところが、その部屋を見た途端、よしえさんの盛り上がっていた気持ちは、すぅーとに引いてしまいました。

 なぜ引いてしまったのか、その部屋を訪れたときのことを、私にこう話してくれました。

「2DKのお部屋だったんですが、すごく散らかっていて。男のひとり暮らしは、こんなものなのかな、とも思ったんですけど、壁紙も剥がれているところがあったり、ところどころ黄ばんでいたり。クローゼントの中に服が入りきらなかったのか、リビングの一角に学生が使うようなパイプハンガーがあって、そこに高級スーツやブランド服が下がっていました。あんな素敵なデートをしてくれていた男性が、こんなボロ家に住んでいるのかと思ったら、シンデレラの馬車がカボチャになったような感覚になりました

 さらに、お金の話になったときに、驚くべきことが判明しました。

「年収が1500万円とプロフィールにありましたよね。でも借金が5000万円あると。私は、サラリーマン家庭で育ってきましたし、借金を作るという感覚が全くわからない。だから、5000万円の借金があるときいたときにドン引きしてしまったんです。そうしたら、『事業をしていたら、借金があって当然だよ』と平然と言われました。そうなんですかね?」

 それは、人それぞれでしょう。個人で事業をしている方の中には、借金を作らずに事業規模を拡大している人もいます。

「さとるさん、あと2年で還暦ですよね。ご自身でお仕事をされているので、定年はありませんが、逆にどこまで働けるかもわからない。身体を壊したら、もうそこで終わり。育ってきた環境が違うから、お金に対する考え方も違うとは思うのですが、私に経済力があるわけではないので、5000万円も借金のある男性との結婚は不安です。若ければ冒険もできるけれど、自分の年齢を考えたら、手堅い職業の方との結婚のほうがいいような気がしました」

 結局、よしえさんから、交際終了を出しました。

 理想どおりの相手はいません。しかし、物事の考え方、お金の使い方、結婚後の仕事をどうしていくかなど、真剣交際に入ったら、生活をしていく上での価値観の擦り合わせは大切です。

 婚活はいっときのこと。でも、結婚は一生のこと、なのですから。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル