この曲を聞けば懐かしいあのころがよみがえる! 人も街もエネルギーに満ち溢れていた、バブル真っ盛りの1986年。年間売上1位を記録したシングルレコード曲は、人気ドラマ『男女7人夏物語』(TBS系)の主題歌『CHA-CHA-CHA』だった。爆発的にヒットしたこの曲を歌っていたのは、歌手の石井明美。いまだから明かせる、“運命の1曲”にまつわる秘話を語ってくれた。
「デビューなんてしたくない!って、何度断ったか」
笑いながら、35年前のデビュー当時をこう振り返る。'80年代といえば、アイドル全盛期の時代。だが当の本人は、芸能界にまったく興味がなかったという。
「もともと友達にヘアアレンジしてあげるのが好きで、高校卒業後は美容院で働いていたんです。でもあまりの激務に、少しお休みしたいと思うようになって。場つなぎのアルバイトとして友人が紹介してくれたのが、六本木のカラオケスナックでした」
場所柄、芸能関係の常連客が多かった。新人アルバイトの彼女は入店後、間もなく芸能プロダクションの関係者から何度もスカウトされることになる。当然、ずば抜けた歌唱力を見込まれてのことかと思いきや、
「服もダサいし、テレビの世界に憧れも興味もない、普通の19歳の女の子のことが珍しかっただけじゃないのかな(笑)」
と、自己分析。
「何度も断っていたんですが、お店でたびたびお会いしているうち、お客さんと信頼関係ができてくるんですよね。働き始めて約1年が過ぎたころ、そんなに言ってくださるならお受けしようという気持ちになって。このお客さんの事務所だったら、売り飛ばされたり脱がされたりしないだろうっていう安心感もありました(笑)」
とはいえ芸能界への無関心は相も変わらず。「1曲限定でお願いします」とタレント側が条件をつけるという、珍しい形でのデビューとなった。
「スナックのアルバイトをやめて、ボイストレーニングやジャズダンスのレッスンを受ける毎日が始まりました。ある日、事務所の会長と喫茶店にいたら、聴いたこともないユーロビートの曲が流れてきたんです」
それが、イタリアのダンスグループ『フィンツィ・コンティーニ』の歌う『CHA-CHA-CHA』だった。
「あ、これ明美が歌うことになった曲だよ! って会長に言われて。初めて聞いたんですけど、特になんの印象もなかったな(笑)。だってユーロビートなんて、まったく興味なかったから」