短命に終わらない有名人ブランドは

 一方で“売れていたのに”終わってしまった、有名人ブランドもあるという。

ある女性タレントさんのブランドは、数年で終わってしまいましたが、それはタレントさん本人と企業側がやりたいことがズレてしまったことで契約が終了となりました。どんな仕事でもそうだと思いますが、何年もチームで仕事をしていると方向性にズレが生じることはあります。また、本当に“ひと段落ついたから”と、休止する有名人ブランドもあります

“例外”な、短命に終わらない有名人ブランドはないのだろうか。

「長続きしているのは、渡辺直美さんの『PUNYUS』(プニュズ)でしょうか。『ウィゴー』と取り組んでいます。あとは辺見えみりさんが数年前まで関わってきた『ベイクルーズ』とやっていた『Plage』(プラージュ)。辺見さんが退任した今でもブランドは残っているという稀有な例ですね。この20年ほど、有名人が離れた時点でブランドは解散ということがほとんどだったので」

渡辺直美。フォロワー国内1位のインスタグラム女王。ぽっちゃり女子向けブランド『PUNYUS(プニュズ)』をプロデュースするなど、今や日本を代表するファッションアイコンに!
渡辺直美。フォロワー国内1位のインスタグラム女王。ぽっちゃり女子向けブランド『PUNYUS(プニュズ)』をプロデュースするなど、今や日本を代表するファッションアイコンに!
【写真】アパレルブランドを立ち上げた芸能人たち

“例外”になる理由は――。

結局のところタレントさん本人のブランドに対する熱心さや真面目さによるんだと思います。きちんとアパレルのことを勉強してブランドに取り組んでいるタレントさんもいると聞きます。長く続いているということは、売れている、儲かっているということです。いつまでも“素人”のまま服を提案し続けても、お客さんはずっとは買ってくれない。タレントさん本人も勉強したり、続けていくなかでノウハウを蓄積していくことが重要でしょう

 アパレル素人は“私はこれが良いと思う!”で商品を作る。

「“私はこれがかわいいと思う!”だけでは最初の1〜2年しか保ちません。それ以降になれば、プラス“じゃあこういう商品もあったらいいんじゃないか”とか、“売るためにどういうアレンジが必要なのか”といったビジネス面も覚えていくことが、タレント自身にも必要でしょう」

 タレントにしろインフルエンサーにしろ、“有名人”ゆえフォロワーは多いが……。

「有名人ブランドの運営はSNSなどのフォロワーに期待を寄せすぎていると思います。たとえば紗栄子さんのインスタグラムのフォロワーは160万人近い。フォロワー数の多さに期待を寄せて、タレントと組むことを決断するアパレル企業が多いのでしょうが、フォロワー数の多さは決して物がたくさん売れるという保証にはなりません。もちろんフォロワー数は少ないよりも多いほうが売れる可能性は高いでしょう。しかし、タレントやインフルエンサーのファンは、その人の容姿や演技、歌、パフォーマンスなどのファンなのであって、その人が作る洋服を求めているとは限らない。

 タレントのファンクラブ会員でも、物販でお金を落としてくれる比率は会員全体の1~5%程度と言われています。本人の知名度の高さに反して年間売上高が非常に少ないというブランドもよく耳にします。知名度だけでは売れにくいのです

 今後も有名人ブランドは有象無象生まれるだろう。そのうち5年保つのは果たして――。