専用施設は“効果なし”
「一部のスケーターは、社会のルールには従わないストリートスタイルをモットーとしており、注意喚起を行っても、警察に通報しても、効果がありません。
そして世間はルールやマナーを順守している人も含めて『スケーター』と同一視しているので、スケーターを見ると“迷惑行為をする反社会的な人々”というイメージを抱かれやすいのも問題と感じます」
そう話すのは、スケボー問題に取り組んでいる江東区区議会議員の三戸安弥(さんのへ・あや)さん。
スケボーには『パーク』と呼ばれる専用施設がある。五輪以降、パークは全国各地で増加中。“パークだけでやってくれ”という声は多い。
「個人的には“パークがあれば路上スケーターが減る”とは思えません。スケートボードができる場所があるにもかかわらず、施設付近にあるマンション敷地内や公園でのマナー違反報告が後を絶ちません。
パークを建設することによってそれまで街で滑っていた層の一部がパークに行くでしょうから、一定の効果はあるでしょう。しかし、あくまでも街中の障害物で技を決めることを“良し”としている元来のスケーターに対し居場所をつくったところで効果は期待できません」(三戸さん、以下同)
道路交通法において《交通のひんぱんな道路》でのスケボーは禁止されているが、“ひんぱん”とはどの程度か。定義は曖昧といえる。
「現行法上では交通事故を未然に防ぐ取り締まりを、これ以上警察に期待することは厳しいのではないかと感じております。しかしながら、器物損壊という観点で見ると、これは明らかに区民の財産が傷つけられている行為だといえるため、警察と地域とで協力して、徹底的に取り締まる必要があると考えます」
三戸さんは「スケボーをすること自体を悪とは考えておりません」と話す。
「スケーターの皆さま全体が他者を思いやる気持ちを今よりも強く持っていただき、スケートボードがスポーツ競技として区民から歓迎される状況になることを、心から望んでいます」
“思いやり”。この言葉は別の取材先でも聞こえた。ほかならぬスケーターからだ。
「スケーターは“空気を読む”必要があります。社会における自分の立ち位置という空気を読む。“これをやったら人に害を及ぼす”という空気の読み方、それはすなわち思いやりということです」
そう話すのはプロスケーターの森田貴宏さん。スケーターとして現役で活動しつつ、映像制作、ショップ経営、中野区のスケートパーク建設に携わるなど、広く日本のスケボー文化の振興に取り組む。
森田さんのスケボーの“現場”はストリート。キャリアは35年だ。近所の人に「うるさい」と怒られるなど、否定との戦いだった。しかし、その過程でトラブルを回避する方法を模索し続けた。