介護によるストレスで問題行動も

 また別のケースでは、ある母親が小学6年の長女Cさんの問題行動について、養護教諭に相談。養護教諭が事情を聴いたところ、Cさんは母子家庭で働きづめの母親に代わって、障がいのある弟の排泄、食事、入浴介助に加え、妹の世話まで一手に引き受けていた。そうした負担のストレスから、独り言や、怒りっぽくなって物を壊すといった問題行動が目立つようになっていた。

 学校側は小児科受診をすすめ、ケア負担によるストレス症状であると確認。当面Cさんは祖父母と同居することになって、ケアから離れられたことで症状は徐々に改善し、学校での見守りや学習支援で、ようやく学習の遅れも改善しつつある。

 ヤングケアラーの子どもたちは自分の置かれた状況が自覚できないため、周囲にSOSを出すこともなく、もちろん福祉制度があることも知らない。介護という名のネグレクト(育児放棄)をされていても、気づくことはない。

毎日3時間程度の睡眠、深まる孤立

孫目線で描かれたほぼ実話の介護漫画(@satomi_qoljojo)
孫目線で描かれたほぼ実話の介護漫画(@satomi_qoljojo)
【イラスト】意外と身近にいる!“ヤングケアラー”事例10パターン

 かつて若者ケアラーだったことを実録漫画にし、WEBで配信中のさとみさんはこう語る。

「休みの日なら一日中介護が当たり前。たとえ大学の講義中でも関係ありません。自宅にいる祖母が薬を過剰摂取して病院に救急搬送されたり、外を徘徊して警察に保護されたりと、突発的な連絡で学業がままならないことがありました。社会人になってからも同じような状況でしたね。もっとしっかり勉強や仕事がしたかった」(さとみさん、以下同)

 さとみさんは進学先の学校が祖母であるきみ子さん(73)の家に近かったことから、居候というかたちで一緒に暮らすことになった。きみ子さんがアルツハイマー型認知症を発症してからは、近くに頼れる家族がいなかったことから介護を担うことに。きみ子さんは病状が悪化するにつれて深夜の徘徊やおしゃべりが増え、さとみさんは連日睡眠不足に悩まされる。

「私が眠ってる間に祖母が階段から落ちたらどうしよう、なんて不安で、深い眠りにつけることはなかったです。毎日3時間程度しか眠れませんでした。日中眠気に襲われますが、対処法といったら電車で仮眠をとるくらい。当時は安眠に憧れていました」

 心身共に限界状態だった自分の介護経験を整理するため、漫画を描き始めたというさとみさん。介護を終えた今、振り返って思うこととは。

「実は介護をしたこと自体は、少しも否定的には思っていません。ただ、周囲は『頑張って』とか『君の人生にきっと役に立つから』などと声をかけてくるだけで、ちゃんと寄り添ってくれなかった。誰ともわかり合えず孤立している状態が苦しかった。だんだん『なんで私がこんなことをしなくてはならないのか』という考えも湧いてきて……。肉親に対してそんな感情を抱く自分が嫌でした」