ケース1. 「家事代行」で依頼者との意思疎通が取れず思わぬクレームが
掃除の家事代行を請け負ったAさん。ぱっと見、きれいな家だったので、どの部屋も均等に掃除した。棚のほこりを落とし、掃除機をかけ、気になるところは拭き掃除。依頼者が不在での作業だったため、報告を出し帰宅。すると、連絡が入り「リビングを中心に掃除してほしかった」と言われて、悪い評価をつけられた。
その後も何度か別の家の掃除の家事代行を請け負ったが「拭き取りが甘い」「髪の毛が落ちていた」など相性の悪い依頼者に当たり、すっかり自信をなくしてしまった。
掃除とひと言でいっても、やり方は人によって違う。専門業者であればマニュアルがあるかもしれないが、必ずしもそれが依頼者の希望に沿っているとも限らない。
ほかにも、依頼者が在宅だったため、掃除に立ち会うような形で「あそこも」「ここも」といった具合に細かな要望を聞いているうち、当初の依頼にあった部屋数をこなすことができなかったなどのトラブルもある。
このような場合は特に、当初の要望から変化してしまっているため落としどころを見つけることが難しい。時間だからと帰ることもできるが、目標を達成していないので全額払うことはできないと言われることも。
また、掃除中に家具や食器などの破損リスクもあり、家事代行を請け負う場合は個人ではなく、業績のある家事代行斡旋業者を通すのが安心だ。
ケース2. 契約書を交わさずWebライターを請け負い納品後に報酬減額交渉、泣き寝入り
40代女性のBさんがWebライターをしたときのこと。事前に依頼内容と報酬額を取り決めていたにもかかわらず、納品後に報酬額を下げたいと言われた。要求をのまなければ次からの仕事はない、と思い泣く泣くあきらめた。
時給換算でいくと、当初の半分程度。原稿を書くときの調べものの時間や推敲する時間などを考えると、労力やコストが稼ぎと到底見合わない。近所の飲食店のアルバイトに切り替えようかと考えている。
これについて、先の早瀬弁護士は次のように教えてくれた。
「継続的な仕事ではない場合、事前に契約書や覚書を結ぶことはなかなかありません。そうなると、お互いの事前確認に頼るしかなくなります。記録をきちんと残していれば交渉の余地はあると思いますが、業界によっても慣習が違い、実現はなかなか難しいでしょう」
早瀬弁護士が「難しい」と言う背景には、発注・受注両者の圧倒的な「力の差」が影響する。
「この金額では厳しい」「この納期では難しい」と受け手が事前に言ってしまうと「では、別の人にお願いしようと思います」とそこで交渉は終了。覚書などを作ってほしいと希望を出しても、先方が面倒だと感じてしまえば、あっさり別の人に仕事がいってしまう。
信頼関係が築けるまではマッチングとほぼ同じ感覚で行うことになるので、どうしても受け手の立場が弱くなるのは避けられない。