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ー ザコシショウが一番貧乏だったとき

 テンガロンハットがトレードマークのピン芸人・ハリウッドザコシショウ(48)。彼にしかできない唯一無二の笑いで根強いファンを獲得しているが、『R-1ぐらんぷり2016』で優勝するまでの24年間は、いわゆる下積み生活だった、と振り返る。

ザコシショウが一番貧乏だったとき

「本当に無名のころよりも『あらびき団』(TBS系)に出ていた時期のほうが貧乏でした。芸人は、少しだけ有名になると週に2〜3回ライブに呼ばれたり、取材が1本だけ入る日があったりしてバイトのシフトが入れにくくなるんです。それでいて仕事が絶え間なくあるわけでもないから、必然的に貧乏に(苦笑)」

 芸人としての仕事は増えたものの、アルバイトをやめなければならず、月収は5万円まで下がってしまったという。

「その当時は、所属事務所が所有する劇場に住み込んで管理人をしていたので、雨風はしのげました。ただ、当然ながら劇場は住む場所ではないから住み心地は最悪。掃除をしても常にホコリが舞っているし、芸人の出入りが激しいからかよく風邪をひいていました。そういうしんどさはありましたが、芸人仲間と一緒に舞台をつくるのは楽しかったです」

 つらくとも楽しい劇場暮らしは2年で終わり、新居での生活をスタートさせたザコシさん。しかし、次に彼を待ち受けていたのは“借金地獄”だったという。

「収入が上がってから劇場を出たわけではないので、月収は5万円のまま。それでは生活費はまかなえないから、借金を繰り返してどんどん借金が増える……という最悪の状況でした。

 でも、2011年に結婚してからは妻が生活費を稼いでくれて、お笑いに集中できる環境になったんです。その点は本当に奥さんに感謝ですね」

 結婚から5年がたち、R-1で優勝した直後からオファーが殺到。一躍人気者となった。

「R-1の翌月に振り込まれた給料で借金をすべて返済しました。僕は気分爽快でしたが、奥さんには『全部返済に使っちゃって今月の生活費はどうするの?』と責められました(笑)。

 最近は“クズ芸人”が人気を集めていますが、やっぱり借金はないほうがいい。いい子ちゃんぶるわけじゃないけど、僕はプライベートのだらしないエピソードでウケようとは思っていなくて、ライブでお客さんの爆笑を取っているときがいちばん楽しいんです。以前よりは売れたおかげで、今は生活の心配をせずに、24時間お笑いのことを考えられるようになって本当によかったです」

 そんな彼の周りにも、現在進行形で貧乏生活を送る若手芸人はたくさんいるという。

「頑張っている後輩もいるけど、なかにはお金がない状態から抜け出す努力をしないヤツもいます。後輩芸人のだーりんずの松本りんすは、寝転がって酒を飲みながらスマホで麻雀番組を見ているときがいちばん幸せ、なんだそうですよ。

 焼き肉をおごるよと言っても、出かけるのが面倒だから近所の安い居酒屋でいい、と言ってくる。『お金がない』と言っているくせに、コンビニで結構お金を使う。ハングリー精神も節約精神もないんだから、それで『売れたい』と言われても難しいですよね(苦笑)」

ハリウッドザコシショウ●1974年、静岡県生まれ。1992年に大阪NSCに11期生として入所し、その後ソニー・ミュージックアーティスツに所属。42歳のとき『R-1ぐらんぷり2016』で史上最年長チャンピオンに輝く。

(取材・文/大貫未来)