弁護士の見解は?
「1つ目は建造物侵入罪。公衆浴場等に正当な理由なく立ち入った場合に該当することになります。異性の裸をのぞき見たり盗撮するために、異性の浴場に立ち入った場合は、管理権者である公衆浴場の施設管理者の意思に反するものであることは明らかであるため、同条が適用されることになります」(正木弁護士、以下同)
今回のケースでは建造物侵入罪が適用されるのか。
「公衆浴場の施設管理者の意思に反した立ち入り行為をした場合には該当する可能性があります。他方で公衆浴場の施設管理者が、“性転換を受けた人物であれば元の性別とは違う浴場に入ることができる”との見解である場合には、該当しない可能性が高いと言えます」
もう一つ適用される可能性があるのは、各都道府県の迷惑防止条例違反だという。
「都道府県ごとに条文の文言が異なります。文言が明確で分かりやすい神奈川県の迷惑防止条例を参考にすると、人を著しく羞恥させ不安を覚えさせるような方法で、公共の場所やプライバシー空間にいる人の下着や裸を見た場合に該当することになります。
建造物侵入罪は、異性の浴場への立ち入りという行為を処罰の対象としているのに対して、迷惑防止条例は、異性の下着や裸を見るという行為を処罰の対象としています」
今回のケースはどうなるのか。
「管理者がOKを出し、先の建造物侵入に該当しないと考えられる場合でも、同条例違反と判断される可能性があります。世論などの状況から、性自認とは違う性別の浴場に立ち入ることが許容されるのかどうか、という観点が重要です。
性転換を受けた人が“元の性別とは違う浴場に入ることができる!”という世論が確立されていない現状では、同条例が適用される可能性が拭いきれません」
さらにこう続ける。
「この点はこれから立法の場での議論はもちろんのこと、我々個々人も十分な議論を交わし、世論を固めていくべきことだと思います」
渦中の“元男性”は動画でこうまとめていた。
「男から女な人にとって、女湯は男骨格がバレるし、元男だとバレたら色々ヤバすぎる危険スポット。結論としては、私と同じような人も自信もって入っていいんじゃないかなと思っております」
性的マイノリティーの人たちに向けての発信なのかもしれないが、まずはこの動画を見て不快に思う人がいないか、そこに思いを巡らせるべきだったのではなかろうか。
正木絢生代表弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。慶應義塾大学法科大学院卒業。第二