コンプラで磨かれたディフェンス力
何かあるとすぐに槍玉に挙がってしまうテレビ業界だが、萎縮してばかりではない。
「少しヤボったいようにも思えますが、最近は“このシーンはこういう理由で入れています”と制作意図を積極的に発信したり、誤解を生まない演出や編集の工夫をするなど、責められにくい“ディフェンス力”も着々と磨かれている。少し前のような過剰な自主規制の状況に比べると、最近は制作サイドも冷静さを取り戻しつつあるようです」
SNSなどでは批判の声ばかりが目立ちがちだが、過剰なコンプライアンスを防ぐためには視聴者の応援の声も重要だと木村さんは指摘する。
「実際に番組やスポンサーに神経質なクレームを入れる人は少数派だということにもテレビ局側は気づいています。そもそも、番組を楽しんでいてこのままでいいと満足している人はあまり声を上げないですし、今回のアンケートのような“どちらでもない”層の声というのはもっと目立たない。
ダメな部分に対する批判はもちろん必要ですが、番組のいいところなど、プラスのエネルギーで建設的な意見を届けることも、テレビが変わるためのいいきっかけになると思います」
視聴者のポジティブな声を伝えることが、適正なコンプライアンスのためには必要なのかもしれない。
【今のコンプライアンスの状況に賛成? 反対?】
賛成 16.17%
反対 22.17%
どちらでもない 51%
その他 10.66%
(全国の30代から60代の男女600人に、2022年12月4日、Freeasyにてアンケートを実施)
木村隆志 テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト、コンサルタント。エンタメを中心に、人間関係、時事などをテーマに出演・寄稿。夫婦関係から職場まで、さまざまな悩みにまつわるコンサルも行っている
(取材・文/吉信 武)