「ミシュラン」という言葉を聞いて連想するものは何? 質問されたら「美食」「三つ星」などの言葉を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
そのイメージはモータースポーツにおけるトップブランド・ミシュランタイヤ社が定期的に刊行しているガイドブック『ミシュランガイド』によるもの。現在、日本を含め世界中の都市のものが作られ、世界の美食を広く世の中に知らしめている。
なぜ、タイヤの会社が美食ガイドを? どうやって作っているの? ミシュランガイドの歴史から、その知られざるトリビアについて、日本ミシュランタイヤ株式会社ミシュランガイド事業部執行役員の本城征二さんに伺った。
タイヤの会社がなぜガイドブックを?
ミシュランタイヤは、その名のとおりタイヤを製造販売する会社として、1889年にフランスのクレルモンフェランで創業した。創業者であるミシュラン兄弟は、実用的な自動車用の空気入りタイヤを発明した素晴らしいエンジニアだったという。
「ミシュラン兄弟は、乗り心地のいい空気入りタイヤを履いた車で快適に遠出をしてほしいと、ガイドブックを作りました。『われわれのタイヤを使えば行動範囲が広がりますよ』と、街の地図だけではなく、周辺情報を数多く紹介しました。それが今日のミシュランガイドの原型となっています」(本城さん、以下同)
初のミシュランガイドが発行されたのは1900年のこと。当時の紹介範囲はフランス全土。タイヤの交換方法など技術的な説明からはじまり、燃料の入手場所、修理工場の規模といった車で移動するために必要な情報のほか、行った先の観光情報が掲載してあった。道路事情も悪く、馬車か鉄道しか移動手段がほとんどだった時代に、自動車でどこまでも行けるということを示したミシュランガイドはまさに画期的なものだったのだ。
では、現在のような美食ガイドへと舵を切ったのはいつごろ?
「毎年ガイドを発行していくうちに、1930年ごろ『このレストランはおすすめですよ』ということを示すために星をつけるようになりました。料理の評価をするには責任が生じますので、そのころから現在に通じる匿名の調査員制度が始まりました」
道路事情もだんだんとよくなり、自動車の性能も上がったことから、ミシュランガイドは純粋なレストラン・ホテルのガイドブックへ、そして料理の評価を行い、おすすめのレストラン・ホテルを紹介するという現在に続くスタイルが生まれたことになる。
現在のミシュランガイドでは現在三つ星までの星のランクに加え、「ビブグルマン」「ミシュラングリーンスター」といった評価を行っている。各評価の概要は次のとおり。ちなみにミシュラングリーンスターは、星またはビブグルマンを獲得したレストランの中から選出されるものだ。
三つ星…そのために旅行する価値のある卓越した料理
二つ星…遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理
一つ星…近くを訪れたら行く価値のある優れた料理
ビブグルマン…価格以上の満足感が得られる料理
グリーンスター…ガストロノミー&サステナビリティ※
※持続可能なガストロノミー(美食)に対し、積極的な活動をしているレストラン。