ミシュランガイドがヨーロッパを飛び出したのは意外にも2005年のニューヨーク版が初で、長いミシュランガイドの歴史から見ればごく最近のこと。その2年後の2007年に、アジア初となる東京版が発行された。それを皮切りにアジア・北米を中心にミシュランガイドの守備範囲は広がっていき、現在では世界36か国で作られている。ちなみに日本は「東京版」と、「京都・大阪版」の2種類を毎年刊行。2022年からは奈良版も更新中だ。
「数ある都市の中でも、東京というのは世界で一番多くの『星』が輝く都市です。先日発表された東京2023年版は200件の星付きレストランの掲載があり、2番目がパリの118件、その次が京都と大阪の各約90件と続きます」
本場であるパリの面積は東京都23区の6分の1ではあるものの「日本は世界一の美食大国」と言っても差し支えないようだ。
ヨーロッパを飛び出し世界の美食を網羅!
さて、ここまで話を聞いてやはり気になってくるのが、お店のセレクションの方法だ。ミシュランガイドは大きく分けて3つの制度で掲載店や星を決めているという。
1つ目は、匿名調査員がリポートすること。
「調査の委託や、専門家のご意見を聞いたり、グルメリポートを参考にするといったことは一切ございません。ミシュランの正社員である専任の匿名調査員が、一般のお客様と同じように食事をして評価をしております」
2つ目は世界共通の基準を設けている点。
「匿名調査員は『素材の質』『料理技術の高さ』『味つけの完成度』『独創性』『常に安定した料理全体の一貫性』という5つの基準に基づき、どんなジャンルのお店でも同じように評価します」
3つ目は“合議制”。
「個人の好みによって意見が偏らないよう、調査員ならびにエリアの責任者、そしてインターナショナルディレクターというグローバルの責任者という三者が『スターミーティング』という会議を行い、星の数を決めています」
正当な評価をするために、人を変え、来店タイミングを変え、次のミシュランガイド発行までの1年間で、締め切りのギリギリまで調査を行うそう。ちなみにミシュランガイドの調査員の部署は独立しており、どんな人が調査を行っているかは執行役員でも知らず、完全にベールに包まれているという。
「詳しいことは私もわかりかねるのですが、かなりすごい社内トレーニングを受けると聞いております。そこはミシュランガイド120年以上のノウハウということで……」
どうしても敷居が高いイメージがある「ミシュラン店」だが、実際は?
「値段の高いお店も確かにありますが、リーズナブルなお店もたくさん掲載しています。また、ミシュランガイド公式ウェブサイトでは、全世界の掲載店を無料で調べられます。どこも自信を持っておすすめできるお店ですので、ぜひ足を運んでみてください」
特にビブグルマン(価格以上の満足感が得られる料理)では、予算が1000円前後からのお店も多数掲載されている。「ミシュラン」という言葉に怖じ気づくことなく、まずは行きたいエリアのお店を調べてみては?