過去の「やらかし」が反省されていない?

 ただ、NHKがなぜこんなミスをしたのか?

 NHK関係者がその裏側を明かす。

料理監修として料理研究家がスタッフとして名を連ねていますけど、調理や食品衛生に関する専門的なスタッフが現場にいなかったそうなんです。

 なおかつ、撮影前には事前に料理のレシピを作成し、スタッフが料理の試作を行うのですが、それすらもなかった。“食べないのだから、見栄えだけよければいい”という、安易な考えが透けて見えますよ

『作りたい女と食べたい女』第9話 見た目は美味しそうなローストビーフだが……(NHKオンデマンドより)
『作りたい女と食べたい女』第9話 見た目は美味しそうなローストビーフだが……(NHKオンデマンドより)
【写真】肉を切ったら真っ赤な断面が……オンライン配信でもカットされていない「生焼けローストビーフ」

 このような杜撰な状況でも、完成した映像が“本当に問題がないのか?”をチェックするという工程が設けられているというが……。

過去に何度も問題になり、番組の制作担当者とは別の専門的な知識のある職員が番組を見て内容を確認する“複眼的試写”が行われるはずなのですが、そのチェックが行われていなかったようなのです。

 NHKでは、2014年に放送した『クローズアップ現代』で過剰演出があったため、“複眼的試写”によるチェック体制を強化してきたはずなのですが……」(同・NHK関係者、以下同)

過剰演出に関する再発防止策について書かれたNHKの文書。“複眼的試写”によるチェック体制を強化してきたはずなのだが、ドラマ制作には及ばなかったのか
過剰演出に関する再発防止策について書かれたNHKの文書。“複眼的試写”によるチェック体制を強化してきたはずなのだが、ドラマ制作には及ばなかったのか

制作を統括するスタッフが“食の素人”だった

 ネット全盛の時代とはいえ、テレビの影響力はいまだ大きい。誤った情報発信により、最悪の場合には食中毒による死者が出るかもしれない。

根本的な原因としては、制作を統括するスタッフが“食の番組”に関して素人だったということです。みなさんドラマの制作現場にずっといた人たちで、番組で料理を扱った経験がほぼなかったんですよ。

 それに『つくたべ』は料理という要素はサブで、メインは“レズビアン”という性的マイノリティを描いたもの。スタッフにもジェンダー・セクシュアリティ考証の担当はいるので、そこにばかり注意がいって、料理に関してはおろそかになってしまったのだと思います」

 NHKは、公式ホームページに掲載したレシピとNHKプラス及びNHKオンデマンドで配信している調理場面の一部を修正したとされる。しかし、まだ問題があるという。

「謝罪後に調理場面の一部をカットしたものを見ましたが、調理したブロック肉を切る場面では中が生のままなのです。これでは、この調理法でローストビーフを作り、食中毒を起こす人が出てしまうかもしれません。この部分も削除か修正するべきですよ」

『作りたい女と食べたい女』第9話 この後のシーンがカットされている(NHKオンデマンドより)
『作りたい女と食べたい女』第9話 この後のシーンがカットされている(NHKオンデマンドより)

 確認のため、NHKオンデマンドで1月19日現在も配信されている『つくたべ』第9話を確認すると、確かに調理したローストビーフを切るシーンでは、肉の内部は“真っ赤”な生肉のように見えるが……。

『作りたい女と食べたい女』第9話 ローストビーフの内部は赤く、生肉のように見える。NHKオンデマンドでは今もこの場面はそのまま(NHKオンデマンドより)
『作りたい女と食べたい女』第9話 ローストビーフの内部は赤く、生肉のように見える。NHKオンデマンドでは今もこの場面はそのまま(NHKオンデマンドより)

 これらの問題点について、NHK広報局に質問状を送付して問い合わせたが、

「今回の件については、番組ホームページでご説明している通りです。制作の詳しい過程については、お答えしておりません」

 と、回答があっただけだった。

 多くの人が見るテレビドラマだからこそ“作る人”は、“見る人”のことを、もっと考えるべきだろう。