NHKで行われた人事制度改革

「同時期に『ニュースウォッチ9』に出演していた有馬嘉男(よしお)キャスターも、菅義偉首相(当時)に事前打ち合わせとは違う内容を質問し、降板させられたとする報道がありました。23年間にわたって『クロ現』の進行役を務めていた国谷裕子アナウンサーも、2014年に菅官房長官(当時)へのインタビューがキッカケとなり降板させられたとされています。武田さんの人事異動も、二階幹事長(当時)からの圧力があったのではないかと囁かれていました」(同・スポーツ紙記者)

 武田アナは、こんな名目で大阪放送局へ転勤になったという。

「首都直下型地震や南海トラフ地震を想定した緊急報道を担当できる人材を配置することと、後進の育成を担ってもらうためでした。ただ、突然の大阪行きに武田さんは納得していなかったと聞いています」(前出・NHK関係者、以下同)

 武田アナは阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などの緊急報道に携わった、災害報道の第一人者。東日本大震災発生後は、災害時の報道内容の見直しにも、先頭に立って取り組んできた。武田アナの豊富な経験を見込んでの人事は、企業で働く“サラリーマン”としての側面もあったのだろう。

「それが、蓋をあけてみれば出演料のかからないタレント代わりとして、大阪局が制作する情報番組への出演がメインでした。さまざまな報道番組を歴任してきた武田さんが、今はジャーナリストとして活躍できる場がほとんどない立場に……。ただ、ご自身の問題だけであれば、まだよかったのかもしれません。今回の退職は、NHK内部に渦巻く問題も、深く関係しているようなのです」

 それは、2020年1月に就任した前田晃伸(てるのぶ)前会長が行った人事制度改革による影響なのだという。 

「管理職への昇級試験は、不透明な評価基準によって合否が決まり、昇級するのは人望や能力のある若手ではなく、実績も能力もない上層部に従順な職員。これにより有能な職員が次々と退職しているのです」

 1月25日、新たにNHK会長に就任した稲葉延雄氏は、

「若干のほころび、マイナス面が生じているかもしれない」

 などと会見で、前田前会長の改革について言及したが……。