バラエティー番組に出なくなった理由
声優の仕事が落ち着いてきた50代、バラエティー番組から声がかかり、タレントとして活躍の場を広げる。
「あの『タッチ』の上杉達也を演じた声優が、実は、オネエキャラの“グレーゾーン”だった、という意外性が面白がられたのだと思います」
人に求められれば、流されるまま波に乗ってみるのが三ツ矢さんだ。最初は自身も面白がって本音トークを展開していた。しかし、やがて「しんどくなってきた」と言う。
「初めのころは、僕が演じたアニメの声を再現するだけで喜んでもらえ、周りのお笑い芸人さんたちがいろいろツッコんでくれてトークもウケた。存在そのものが珍しがられたのだと思います。でも、笑ってもらえるエピソードがたくさんあるわけではないし、芸人さんのような笑わせるテクニックも持っていない。それでも笑わせなきゃいけない。おかしくなくても笑わなきゃいけない。だんだん心の負担になってきたのです」
やがて不眠症に陥る。
「バラエティーに出るときはすごくテンションを上げるから、帰宅後も頭が興奮していて、すぐに寝られないんです。それが何日も続くと、うつっぽくなるし、疲労もとれなくて仕事にも影響する。バラエティーは自分には向いていない、引き際だなと思って。お断りするようになったのです」
バラエティー番組で見かけなくなったのは、そういう事情があったからだ。
「ただ、声優としてトーク番組に出ることは続けています。本音で話せますし、声優というものをみなさんに理解していただきたいですから」
三ツ矢さんは自分の心にうそをつけない人なのだろう。
公には、自身のセクシュアリティーを“グレーゾーン”とぼかしていたが、2017年にバラエティー番組でカミングアウトしたと話題になった。
「番組の会話の流れの中で、『三ツ矢さんは、本当はどっちなの?』と聞かれて、うそつく必要はないので『ゲイかストレートかって言われればゲイ』と答えたんです。
そしたら、その部分だけをクローズアップされ、翌日のネットニュースで報じられたのです」