LGBTQの当事者だから言えること
カミングアウト以降、三ツ矢さんはLGBTQの講演会などに講師として呼ばれることが増えた。
「LGBTQとは何なのか、理解を深めてもらえるよう、お話をしています」
また、女優の東ちづるさんが理事長を務める、「まぜこぜの社会」を目指す一般社団法人『Get in touch』の活動にも理事として参加している。
「LGBTQだけじゃなく、障害のある方とか、要するにマイノリティーの人も、そうじゃない人も、みんながまぜこぜの社会で、平等に住みやすい世界になったらいいね、と。それを目指す活動です。その一環で講演会やイベントがあると、僕もお話しして啓発活動を行ったり、ホームページの動画のナレーターを務めたりしています」
そもそも“グレーゾーン”と言っていたのも、「ゲイかストレートか、白黒をつけようとする、世の中の風潮がイヤだった」と明かす。ゲイもストレートも、白人も黒人もみんな混ぜたらグレーという意味が込められていたのだ。
「僕自身は、親や兄姉も気がついていたけど普通に接してくれていたし、友達も普通に受け入れてくれていたので、ゲイであることをオープンにして生きてきました。でも人それぞれ事情があり、カミングアウトできずに生きづらさを抱えている人もいます。
だから『え、あの人、ゲイなの?』みたいな好奇な目で見ないでほしい。笑い上戸とか癇癪(かんしゃく)持ちとか、みんな性格の特徴がありますよね。LGBTQも性格のひとつ、そんな捉え方をしてほしい」
そして、こう続けた。
「僕が若いころゲイに対して侮蔑や差別があり、新宿2丁目(ゲイタウン)に行くと、顔を隠して歩いてる人も多かった。でも今はみんなが顔を上げ立ち上がって活動を始めた。その一翼を担うことは、世の中のためになるし、意味のあること。
お金にはならないですけど(笑)、これからはちょっとそこに自分の時間を割いていこうかなと。今春は、『Get in touch』の活動で、身体の不自由な人やダウン症の子とかみんなで舞台をやることになりました」
多才な三ツ矢さんの力を発揮する場所が、また広がっていきそうだ。
〈取材・文/村瀬素子〉
むらせ・もとこ ●映画会社、編集プロダクションを経て'95 年よりフリーランス・ライターとして活動。女性誌を中心に、芸能人、アスリート、文化人などの人物インタビューのほか、映画、経済、健康などの分野で取材・執筆。
※日高のり子さんの「高」は、正しくは「はしごだか」です。
まぜこぜ一座公演、月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』を開演。
日時:2023年3月5日(日) 13:00~(開場12:30)と、17:30~(開場17:00)の2回公演 場所:渋谷区文化総合センター大和田6階 伝承ホールにて