黒電話のかけ方がわからない若者たち

 NTT技術史料館によると、国産電話の第1号機が製作されたのは1878年で、グラハム・ベルが電話を発明したわずか2年後のことだった。固定電話が一般家庭で広く使われるようになったのは1980年代に入ってから。

 当初は黒電話が電電公社から貸し出されていたが、'85年の通信自由化政策に伴い、さまざまなメーカーによる電話機が使用されるようになり、固定電話の普及が進む。しかし1990年代後半になると携帯電話が急速に浸透し、固定電話の需要は減少。2000年には携帯電話とPHSの契約数が固定電話を抜いている。

 NTT技術史料館を訪れる若者の中には、展示してある、プッシュ式ではないダイヤル式の黒電話を見て、

「使い方がわからない」

 とつぶやく人も多いという。20歳未満の世代は携帯電話ネイティブで、黒電話はもはや映画やテレビの中だけのもの。片や、

いまだにウチは黒電話。45年間使っていて故障したのは1度だけ。ここまでくるともう新しいものに買い替えようという気が起こりません」(神奈川県・58歳女性)

 という声もあるように、黒電話に愛着を持つ人も根強く残る。振り返ればかつては固定電話が唯一の通話手段で、いくつものドラマがそこで生まれてきた。そんな“固定電話の思い出”を聞いてみると……。