ますます深刻な高齢女性の低年金
多くの高齢者が年金だけでは暮らせず、条件の厳しい非正規雇用に甘んじながらも働き続けるのはなぜか。原因の多くは年金額の低さにある。
日本の年金は「人口が増え続け、経済が成長すること」を前提に作られていたが、そうはうまくいかなかった。少子化が続き、経済は伸び悩んだ結果、もらえる年齢がたびたび引き上げられたり、支給額も見直されてきた。
それなのに、国民健康保険や介護保険の保険料や税金は上がり、高齢者の家計は圧迫されるばかり。低年金であればあるほど、その影響は大きい。
「会社員の夫と専業主婦の妻という平均的な老夫婦の厚生年金受給者でも、年金だけで食べていくのは難しいのが現実です。ましてやこのモデルから外れた人たちはさらに低い年金額で苦しんでいる。国民年金の平均受給額はたったの5万円です」
なかでも高齢女性の低年金は深刻だ。いま年金をもらっている世代の女性は育児休業制度もなく、結婚、出産、育児で退職することが当たり前だった。再び働いても、パートでは厚生年金に入ることができず(平成16年度からは条件を満たせば加入可能)、自動的に国民年金加入者となった結果、低年金受給者に甘んじている。
次に紹介する小沢さん(仮名)のケースのように、夫に先立たれた場合も苦しい現実に直面しているのだ。
働かないと生きていけない低年金のおひとりさま女性
小沢恵子さん(仮名・80歳)
夫に先立たれ、ひとり暮らしをしている小沢さんは、80歳の高齢にもかかわらず障害者施設で週5日3時間パート勤務している。
74歳のときには年金が月額7万3000円あったのだが、いまは6万円弱と6年間で1万3000円も減額されてしまったという。もともと低額なのに、これだけ減額されてしまうとまさに死活問題。家賃が4万円強かかるため、このパートの月5万円の収入が命綱という状況だ。
本音をいえば、仕事はすでに体力的に限界がきているのだが、生活保護の申請にはどうしてもふんぎれない。わずかながらもコツコツためてきた貯金をほぼ使い切らないともらえないからだ。
仕事で世話をする子どもたちはかわいいし、仕事があるだけマシと自分をなだめる毎日。働けなくなる日がきたら腹をくくるしかないな、と思っている。
「かつて女性は専業主婦で夫を支え、仕事をしてもパートやアルバイトといった補助的役割を担ってきました。
結果、国民年金にしか加入できず、支給額は月3万~4万円程度にしかならない人がたくさんいる。夫がいればいいのですが、ひとりになったら最後、これだけでは暮らしていけない。ためらうことなく生活保護を申請していいレベルです」
結婚や出産でキャリアが分断されたり、子どもがいたりして非正規雇用でしか働けなかった女性たち。離婚女性やシングルマザーの多くは、その結果、驚くべき低年金に苦しんでいるのだ。