シニアの労災が急増の衝撃
働くシニアが置かれている労働環境もきわめて厳しい。それは、労災事故における高齢者の割合からも見てとれる。
2021年、労働災害で亡くなった60歳以上の高齢者は360人。驚くべきことに、この人数はこの年の労災死亡者総数の43.3%に上る。つまり、日本全国の労災死亡者の4割強がシニアなのだ。
「それも、労災による死亡事故そのものは減少傾向にあるにもかかわらず、です。全体では減っているのに高齢者の死亡事故だけが増えているのは、まさに異常な状態。いかにシニアが過酷な労働現場に追いやられているかがわかります」
高齢ともなれば、死亡に至らずとも仕事の影響からの身体の不具合やケガなども起こりやすくなるが、本人が意識的に労災を申告しないケースも少なくないという。
「ほとんどが非正規雇用ですから、身体が万全でないことが知られてしまうと、雇用主から『もう無理じゃない?』などとやんわり退職を迫られることもある。
本来なら雇用主は働く人の健康状態を把握し、安全に配慮しなければいけないのに、実態はまったくの逆なのです」
仕事を失うのではないか、辞めさせられるのではないかといった不安のあまり、本来与えられている当然の権利も行使しない老人たち。「雇ってもえるだけマシ」「迷惑をかけるから」と自らをなだめながら、苦しさをのみ込んで1日1日を乗り切るしかない。
日本経済は、高齢者という弱者を下支えにして成り立っているのかと思うと、なんとも悲しい。
死亡事故はこうして起きた!高齢女性の清掃員4人が犠牲に
2022年2月11日、新潟県・三幸製菓の工場で深夜に火災が発生。アルバイトの女性4人と従業員男性2人が亡くなったが、この女性4人は73歳、71歳、70歳、68歳の高齢者だった。
4名ともベテランだったが、非正規雇用のアルバイトのため、避難訓練にも参加していなかったとされている。夜中の労働時間は「原則として9時半から2~3時間」とされていたが、実態は菓子の生産状況に左右され、午前3時までかかることもあった。
まじめに働いてきた高齢者が犠牲となった悲惨な事件だ。