「生活保護」は決して恥ではない
困窮するシニアを救う最後のセーフティーネットともいえる制度に「生活保護」がある。実際、生活保護を受けている世帯の55.8%が高齢者世帯であり、その約半分は高齢者のひとり暮らしだ。
しかし、この数字に安心してはいけない。これはあくまでも「受給できている数」にすぎず、実際は「受給する資格があるのにもかかわらず、もらっていない人たち」があまりにも多いのだ。その数は、実際にもらっている世帯数の4倍にも上るといわれている。
では、なぜそんなにも多くの人がこの救済制度から漏れているのだろうか。
「『生活保護』は恥ずかしい、国の世話になるのは申し訳ない、と思っている人が多く、とりわけシニアはこの意識が強い。結果、生活保護基準以下でも我慢しながら暮らしている人が本当に多いのです。
大げさではなく、朽ちかけた家に住み、庭で野菜を育てながら自給自足でなんとか食いつないでいる人もいます」
また、年金をもらっていたら生活保護は受けられないなど、さまざまな誤解や噂を事実だと信じている人が多いのも原因だ。
「生活保護にはネガティブな噂がついてまわってなかなか払拭されず、そのため必要な人に浸透しないのが問題です。
例えば、車や持ち家があるとダメ、家族や親族に連絡がいって迷惑がかかる、税金を滞納していたら受けられないなど。でも実際はそうではないので、相談だけでも足を運んでほしいと思います」
資産価値がなくなった家や居住用の家は認められる場合があるし、仕事に必要な場合や、車しか移動手段がない場合は車を持つことも認められる。
また、何年も連絡が途絶えていて援助が期待できない家族や親族には連絡をしなくてもよいという通達も出ている。
年金をもらっていても、あまりに低額で生活保護基準に相当しなければ、不足分を受給することもできるという。
使える制度は堂々と使うことで、制度も整備されていくはずだ。
ただ、これほどのネガティブイメージがついてまわるのは、福祉行政の末端である福祉事務所にも問題があると藤田さんは言う。
あまりにオーバーワークで必要な研修を受ける余裕がなく知識不足だったり、生活保護受給者をぞんざいに扱う職員がいることも悲しいことに事実だ。福祉行政の現場の改善も求められている。