自分が85歳まで生きると想定すると、必要な貯金額は720万円であると試算。そのために、アルバイトで得た収入から、毎月2万〜3万円を貯金にまわしているのだ。
チャンネル内には、ほかにも、そのためのお金のやりくり紹介動画、月々の支出の公開動画なども上がっていた。
“ぼっち”の老後を視聴者が“見守り”
YouTubeチャンネルを始めたきっかけは、息子からの提案だったと波乱万丈さん。
「ちょうどコロナが蔓延し始めた頃で、私は、それまでずっと続けてきた縫製の仕事を失って、すっかり落ち込んでしまっていて。そんなときに息子が、何かやってみたら?と。それまでもYouTubeはときどき見ていて、同世代くらいの人たちが自分の生活について発信したりしていることは知っていました。それで、私もやってみたいという思いがめばえて、見よう見まねで始めてみたんです」(波乱万丈さん、以下同)
スマホ2台と三脚を使った動画の撮影方法や編集の仕方は、最初は息子から教わり、今は撮影から編集までをほとんど1人で行っている。
「もちろん、少しでも収入の足しになればいいなという思いはありました。私は、夫を早くに亡くしていますし、夫が自営業だったために、年金受給額がとても少ないんです。夫が亡くなってからは私が働いて、なんとか子ども2人を育て上げましたが、シングルマザーに対して理解のない時代でしたし、途中で病気をして働けない時期もあったりして……貯金はおろか、将来のための年金保険料を支払う余裕は、いつだってまったくありませんでした」
彼女の人生は幼少期から波乱万丈だった。九州の小さな離島で、3人きょうだいの真ん中として生まれたが、母親が職場の男性と不倫の果てに失踪。父も脳梗塞で倒れてしまい、中学生のころには生活保護に頼らざる得ない生活を送っていたという。そのときの経験もあって、波乱万丈さんは、自身が生活保護を受けることについては、今も消極的だ。
「視聴者さんの中には、絶対受けたほうがいいとおっしゃる方もいるのですけど、生活保護は、当時の私たちのように、本当に必要な家庭で使って欲しいと思っています。私は、まだ体力的に働けないわけではないですし、お給料はささやかですけれど、私にとって働くことは生きがいなんです。だから、そう思えているうちは自分で頑張って、本当にそれもできなくなったときには、と考えています」
中学校を出てからすぐ集団就職で島を離れ、父が亡くなってからは弟の面倒をみるため島に戻り住み込みでウエイトレスとして働いた。弟が独立するまで面倒をみた彼女は、友人たちと出かけた旅先で運命的に出会った25歳年上の男性と結婚する。植木の剪定などの園芸を生業とする人だった。
「すごく年が離れていましたので、最初は不安もありましたけど、とても優しい人でした。子どもも2人授かって……短い結婚生活でしたけど、幸せでした」