甘いものは太る。これはダイエットの常識でもあるだろう。
では、その逆はということで、辛いものなら太らないと考える人もいる。実際、そのあたりを利用したダイエット法はかなり以前から提唱されている。
“激辛食材でやせる”は本当か?
10年前には男性週刊誌に、
《北海道大学が解明!唐辛子ダイエットが脂肪がどんどん燃え上がるいちばん安心確実な方法だった》
という記事が掲載された。唐辛子に多く含まれるカプサイシンが、身体を温め、発汗を促し、脂肪を燃えやすくすることに着目したものだ。
そんな唐辛子を使ったポピュラーな食べ物といえば、キムチ。本場は韓国で、韓国の芸能人もスリムな印象がある。このことも影響してか、韓流ドラマやKポップを好きな日本女性のあいだで、辛いものは太らないというイメージが広まっているようだ。
が、水を差すようなことを言ってしまうと、辛いものには食欲増進効果もある。白米やパン、麺などの炭水化物にも合うので、逆に太ってしまうことにもつながりやすい。
また、その人にとっての適量を超えると、胃腸や食道などにダメージがもたらされる。ほどよく摂取して、ダイエット効果だけを得るというのは難しいのだ。
というのも、辛いものには依存性がある。他の味に比べても、その依存性は強力だ。
なぜなら、辛味というのは「味覚」ではない。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5種類が生物学的にいうところの味覚であり、舌にある味蕾で感知するものだ。
一方、辛味は味蕾で感じることができず、ヒリヒリとして熱いことによる痛みが心地よさに変換されるという。つまり、痛みの快楽だ。
こういうものと上手に付き合っていくのは容易ではない。「快楽漸減の法則」というものがあって、同じことの繰り返しでは満たされなくなり、エスカレートするか飽きるかのどちらかに向かいがちだ。辛いものに強くなるというのは、今どきの言葉でいう「沼にハマる」という状態でもある。