ネット上のデマから激化した妨害
だが、そんな「バスカフェ」が今、存続の危機にある。
取材を始めて1か月が過ぎたころから、「バスカフェ」の周囲で物騒な光景が展開されるようになった。
「仁藤出てこい!」「税金を返せ!」
男たちの怒声が歌舞伎町の路上に響く。「ブス!」などと罵声を飛ばす者もいた。仁藤さんが声かけ活動に出かけると、スマホを構えた男たちにわっと取り囲まれることも珍しくなくなった。
「ほら、こっち向けよ」「警察呼べよ」男たちが仁藤さんの行く手を阻み、悪罵を繰り返す。ネット上でも仁藤さんに向けた誹謗中傷が書き込まれ、「炎上」状態が続いている。
一体、何が起きているのか。
発端は昨年11月。都内在住の男性がコラボの会計報告に「不正」があるとして、東京都に若年女性支援事業の委託費返還などを求める住民監査請求を行った。同事業では、家出少女などの自立支援を目的とし、夜間の見回りや声かけ活動など、行政ができない部分を'19年からコラボに委託している。「バスカフェ」の活動はその一環だ。
男性はネット上でも仁藤さんたちコラボの活動を「詐欺」「不正疑惑」などと表現。これに同調する者たちが続出した。ネット上を真偽不明の情報が飛び交う。
「女性たちに生活保護を不正受給させ、タコ部屋で生活させている」「女性たちの医療支援に際し、医療機関からキックバックを受けている」「都に不正請求している」
まるでコラボが公金を横領しているかのようなイメージが流布されたのだ。
結論から言えば、すべてデマである。仁藤さんは昨年11月、前出男性の主張が名誉毀損の不法行為に当たるとして、損害賠償と謝罪を求める民事訴訟を東京地裁に起こした。
ちなみに今年1月に発表された監査結果によると、請求人である男性が主張した「水増し請求」「不正請求」は、その多くが「妥当でない」と退けられた。コラボ側の「違法行為」は一切確認されなかったのである。
しかし監査委員は一部に「不当」なものがあるとし、都に「経費の再調査」を勧告した。
これを受けて再調査が実施される。3月3日、その結果が発表された。それによると、調査対象となった2021年の事業において、都が支払い済みの委託料2600万円に対し、コラボ側の支払い経費は2713万円であることが判明。つまり、コラボは「持ち出し」によって活動を続けてきたのだ。
「コラボが都の委託経費を不正に請求しているといった誹謗中傷に根拠がないことが、再調査で改めて明らかになった」(弁護団のひとり、神原元弁護士)