前出の内閣府調査にも、地方議員の女性たちから被害の声が多く寄せられている。
その内訳を見ると、投票の見返りに交際を迫る、性的な要求をするなどのセクハラが目につく。妊娠・出産に対し嫌がらせ的な言動をする「マタニティーハラスメント」も少なくない。SNS上に無断で個人情報を流すといった、ネットを介したハラスメントの報告もあった。
「私が調査していて驚いたのは、例えば市議員から県議会議員になったとたん、票ハラを受けなくなったという女性が結構いたこと。本来、上下関係はないと思うんですが、市区町村の議会から県議会、それから国会と進むにつれ、相手がより強い権力を持っているのだと思うようです」
“政治は男性のもの”という無意識の偏見
そもそも地方議員の中で女性の占める割合は少ない。共同通信が2月に発表した調査では、全国平均で15.4%。首都圏でも21.2%にとどまる。そのうえ女性議員が1人もいない「女性ゼロ議会」は全国で16議会に上る。
「“政治は男性のもの”という無意識の偏見が強く影響しているのでしょう。実際、調査した女性議員から(有権者に)“議員として見られていない”という言葉を頻繁に聞きます。また、ハラスメントをたいした問題ではないと考える、日本社会が持つ認識の甘さも大きい」
さらに地方議員の場合、当選に必要とされる「地盤(組織力)・看板(知名度)・カバン(資金)」の要素に加えて、地域のネットワークを持っている人のほうが選挙に有利だといわれている。
「女性は結婚に伴い地元を離れたり、夫の実家の近くに移り住むケースが結構あります。すると今いる地域で新たに地縁をつくっていくことは難しい。そうした意味でも、選挙では女性のほうが不利だと感じますね」(田村さん)
自分が暮らす地域でも、その議会でも、少数派である女性たちは“よそもの扱い”や排除をされやすい構造がある。そうした中でハラスメントが横行し、女性の政治参加の妨げになってきた。実際、内閣府の'21年調査では選挙への立候補を断念した人のうち、女性の65.5%が「何らかのハラスメントを受けた」と回答している。
女性の議員や候補者が受けたハラスメントの例
【有権者から】
●街頭演説中に身体を触られたり、抱きつかれたりする
●執拗に食事の誘いや交際を迫られる
●「当選したのは俺のおかげだから」と無理やりキスをされる
●(投票の見返りとして)婚姻届を手渡される
●無断で個人情報を流される
【同僚議員から】
●「女は顔がよければ当選する」「女に政治は無理だ」と言われる
●子育て支援の議論中、「まずは子どもを産んだら」とプレッシャーをかけられる
●カラオケのデュエットを強要される
●政治活動で遅くなった際、「旦那がかわいそう」と言われる
●本会議で質問中、「女は黙っとけ」というヤジを激しく飛ばされる