恋に落ちて結婚も離婚、娘と2人で高知暮らし
2作目の映画化に向けて飛び回る中、取材で訪れた高野山で、恋に落ちた。
「遠目から見た瞬間に、『何だあの人間は!』と(笑)。それまでの人生で出会ったことがないタイプの人でした。自分は未来のためにどうしたら役に立てるんだろうみたいな話を2人でしていたら、すっごく面白くって。すぐに結婚しました」
'14年に高知で新婚生活を開始。映画『0・5ミリ』の公開を経て、翌年出産した。その後、「お互いに進む道が違うね」と離婚してからは、娘と2人で高知暮らしを続けている。
安藤が幼い娘を連れてスーパーに行ったときのこと。買い物客のおじちゃんが追いかけてきて、娘にお小遣いだと千円札をくれた。安藤が驚くと、こう言われたそうだ。
「こうやって子どもが元気に育っちゅうのを見ただけで、本当にありがたい」
しかも、それは1度きりではなかった。散歩途中に知らないおばちゃんと話が弾み、アメなどをもらったことは数えきれない。
「移住した当初は『エー!?』ってなったけど、あんたが幸せやったら、私もうれしい。そういう文化が高知にはあるんですね」
親切にしてもらったお礼を返そうとすると、こうも言われた。
「いいから、その分、またどこかで返しちゃりや。そしたら巡り巡って、また自分に返って来るがやき」壮大な幸せの循環とでもいおうか。循環の輪の中で、安藤も皆を幸せにできることを考えるようになった。
そして、'18年に立ち上げたのが異業種チーム「わっしょい!」だ。「子どもたちの輝く未来をともに描く」ため、地元のお母ちゃんたち、農家、研究者など約50名が集結。それぞれの特技とマンパワーを生かして、農、食、教育、芸術などのイベントを企画している。例えば、種から育てた大豆を使った味噌づくりは毎年恒例の人気企画だ。
そのころ出会い、安藤が大きな影響を受けたという女性がいる。ホスピタルアーティストの小笠原まきさん(54)だ。全国の病院で壁画などを描く一方、NPO法人「地球の子ども」の代表を務め、子ども食堂やひとり親家庭への支援などをしている。
「まきさんは高知人気質そのままの人で、めちゃくちゃ明るい。支援とかボランティアとか、私がやりたいと思ってもやれなかったことを、本当にコツコツと積み重ねている。しかも、かわいそうだから助けてあげるんじゃなくて、皆が元気になれるようなことを自然とやっているんですよ」
安藤も「地球の子ども」を応援するようになり、一緒に子ども食堂をしたり、情報発信などを手伝うようになった。おかげで活動への注目度が上がったと、小笠原さんもうれしそうにこう語る。
「コロナでつらい話ばかりが流れたときに、桃子さんが何かできないかなというお話をされて、一緒に児童養護施設にスイーツや皿鉢料理を届けたんです。桃子さんが行くとたくさん人が集まってきて、子どもたちもすごく喜んでくれましたね」
今年2月に行われた「高知オーガニックフェスタ」では「地球の子ども」も出店。おむすびを売った売り上げでお米を子どもたちに配るプロジェクトや、ひとり親家庭に食材を配ったりした。
安藤はオーガニックフェスタ全体の実行委員長を務めており、見事な采配だったと小笠原さんは感心する。
「やっぱり桃子さんは映画監督さんなんですよね。イベントでは会場を端から端まで走り回って細部まで気を配られているし、それでいながら全体のいろいろな動きもちゃんと見ている。桃子さんが引っ張っていくというより、桃子さんが声をかけることによって、皆が一緒に立ち上がり、それぞれが輝き始めるような感じがしました」