問題が解けたときの爽快感を求めて

「わが家には今、中学生と高校生の娘がいますが、その娘たちが小学校低学年のころ、散歩をしながら車のナンバープレートの4桁の数字を、誰がいちばん早く足すことができるかをゲームにしていました。

 娘たちは計算することを楽しんでいたんでしょう。出かけるときにはナンバーを見て計算する癖がつき、気がついたら僕よりも娘たちのほうが早く計算できるようになっていました。今でも2人は計算が得意です」

「暗算」という言葉で思い出すのはそろばんだが、習得するまでは時間と手間が……※画像はイメージです
「暗算」という言葉で思い出すのはそろばんだが、習得するまでは時間と手間が……※画像はイメージです
【写真】【14×15=?】を3つの手順で解く方法!

 この『小学生が~』を購入した人もこんな声を。

「こんな規則性を覚えるだけで、ささっと答えが出るなんて、面白いですよね。ある意味、脳トレと同じように遊んでいるうちに自然にできる感じ」

 計算はゲーム感覚で楽しめるもの──。こうした“特性”を利用し、計算本ブームに火がつくのはテレビ番組の影響力も大きいという。

「テレビの放送作家さんと話したとき、こんなことを言ってました。“クイズ番組などで、どうして子ども向けの計算書や脳トレ本からの問題を取り扱うことが多いかわかる?

 視聴者も参加できて、なおかつ答えが出るまでチャンネルを変えさせないことが可能だからだよ”と。ちなみに、テレビで取り上げるのは英語よりも算数(計算)のほうがいいらしいです。

 英語は大人の層に苦手意識があるらしいのですが、計算は買い物のときなど自然に使っているので、ハードルが低いのだとか。そして人気のいちばんの理由は、解けたときの“スッキリ感”“爽快感”だそうです」(黒田さん)

 子どもには勉強、大人には認知症予防や頭の体操になる。親子が一緒に楽しめて、世代間をつなげるツールにもなっているのでは、と黒田さんは話す。

「SNSが発達し、スマホなどで調べれば答えがすぐにわかってしまう時代。現代人は“考える”機会が減っている傾向があります。だからこそ“考える”という時間が面白く感じるのでは、と放送作家さんはおっしゃっていました。

 また、コロナ禍という特殊な時期では人とのつながりが希薄になりました。“考察”“謎解き”ということが人気なのは、みんなでワイワイと語ることができ、仲間とつながれることも大きいのだと思います」

 そしてSNS時代だからこそ、ブームになるのが早い、という。

「解けたときの“スッキリ感”を体験しているため“ねぇねぇ、これ知ってる?”と話題に出したくなり、SNSで自然と拡散していく要因になっているのかな、と僕は感じています」(黒田さん)

 前出の吉田さんは、今までできなかった計算ができたときの“爽快感”を求める気持ちはよくわかると言い、読者からの声をこう話す。

「19×19以上の2桁の計算方法を本にしてほしい、というお問い合わせが非常に多いです。実は、10の位が同じであれば24×28とかも同じやり方でできるんです。19×19からステップアップしたい方は、ぜひやってみてください」

 問題が解けたときの“快感”を求める声がある限り、計算本のブームは続いていくのかも──。