志茂田が関節リウマチを発症したのは2017年。右ひざの痛みから始まったが、20年以上ライフワークとしてきた絵本の読み聞かせ活動はなんとか続けることができていた。しかしその後、保養のために訪れた温泉施設で転倒。腰椎を圧迫骨折してリウマチが悪化し、2019年の暮れごろから車いす生活となった。

「車いすユーザーになり、まもなくコロナ禍となりました。社会環境の変化が今、子どもたちの世界にも大きな影響を及ぼしていると感じています」

弱くても、傷つきやすくてもいい

 志茂田のSNSには「死にたい」と相談が寄せられることもある。なかには、10代後半の少女もいたという。

人間はいつでも死ねる。今、死んだってなんともならないよと返信するとともに、ツイッターのフォロワーさんたちにも“この子の考えを変えさせるメッセージを送ってください”と呼びかけたんです。すると多くの人が反応してくれました。結果的にその子は自殺を思いとどまったとフォロワーさんの1人が教えてくれたんです。SNSは、使いようによっては大きな力になると感じた出来事でした」

 志茂田は「今の日本には、年代や性別にかかわらずストレスを抱えて疲弊している人が多い」と続ける。そんな人たちに向けて“叱咤激励は逆効果”と考えている。

「自分の心がデリケートだって、傷つきやすくたっていいじゃない。なんで自分はこんなに弱いんだ、弱いから駄目なんだ!なんて、自分を責めちゃいけない。自分の心を一番大事にしてほしいという思いが、僕は常にあるんです

 最近気になったのは「持ってる・持ってない」という言葉。自身のブログで、

「人は持ってるのに 自分は持ってないと悲観しているのか 大丈夫 持ってるぞ」と発信。読者の共感を呼んだ。

「“持ってる”なんて表現を何かのニュースで見たときにね、あやふやな言葉だなぁと思ったんです。あの人はあれもこれも持ってる、という羨望的憧れがまずそこにある。

 例えば大谷翔平選手はピラミッドのトップにいてなんでも持ってるけど、自分には何もない、とね。でも自分が持っているものが他人と違うだけで、みんな何かを持ってるんです。だから自信を持ちなよ、と言いたかった。大事なのは、自分が何を持っているかを見極めるために自分と向き合うこと。これだ!と自分が決めたら努力し、継続することなんです」

 志茂田のSNSには、フォロワーたちが前向きな気持ちになったり、ふっと心が軽くなったりするような温かい言葉が並ぶ。

ツイッターというツールは、僕に大きな可能性を与えてくれました。それにネットを使えば、世界の裏側のことだってリアルタイムで知ることができる。好奇心のおもむくまま、世界を広げていけるんです。こんな身体になって……と自分を儚んだら、そこですべてが止まっちゃう。車いすユーザーになって初めて、病気の人の気持ちがよくわかりました。だからこそ、病気を受け入れたところから新しい自分の世界が見えてくるよ、と伝えたい。そしてその世界は決して狭くなく、広いものだと知ってほしいんです