母乳育児について、おばあちゃん世代で意見が割れているのも興味深い。

「仕事があるうえにあまり母乳も出なかったので粉ミルクを使っていたが、母乳のほうがいいと母に決めつけられた」(滋賀県 39歳)

「WHO(世界保健機関)では2歳以上まで母乳育児を推奨しているのに、母は粉ミルクのほうが栄養豊富だと言う」(大阪府 38歳)

 戦後、粉ミルクが重宝された時期は確かにあった。食糧難による栄養不足で、十分な母乳育児が難しかった時代だ。いまでは赤ちゃんの免疫機能の発達や、母子のスキンシップの観点からも、世界中で母乳育児が推奨されている。もちろん、さまざまな事情で母乳を与えられないケースもあるが、罪悪感を抱く必要はなく、状況次第で粉ミルクを上手に活用すべきだ。

対立が起こる原因は?

 おばあちゃん世代の常識が、令和では非常識となった例はほかにもある。ベビーパウダーもそのひとつ。昔はおふろあがりの赤ちゃんが真っ白になるほどパウダーをまぶしていたものだが、いまでは過度な使用は汗腺をふさぎ、湿疹やかぶれの原因になるといわれている。

 また、赤ちゃんの積極的な日光浴も推奨されていたが、現在は紫外線を過度に浴びる危険性を考慮し「直射日光を避けた外気浴」が一般的だ。

 時代の流れとともに育児の常識が変化するのは当然のことだが、そもそもなぜ、子育てをめぐる母娘の対立が起こってしまうのか。

「おばあちゃん世代は自分の子どもたちを立派に育ててきた自負があり、よかれと思いその知識を伝えてくれています。一方でこの情報過多の時代、若いママさんたちはスマホなどで常に最新の情報をアップデートしています。その内容にズレがあることで、意見の食い違いが起きてしまうのでしょう」(榎本さん)

 ママ世代にもっとも不評なのは、おばあちゃん世代からのアドバイスが怒りをもって行われるときだ。

「ワセリンによる赤ちゃんの肌の保湿が、アトピー性皮膚炎の発症予防になるのに、母から“何を塗っているの!”と怒りぎみに言われた」(広島県 37歳)

夫の祖母が、自分がしてきた子育て法がすべて正しいと思っている。私のやること何もかもを、すべて否定してくる」(京都府 28歳)

 おばあちゃんの助言も、最新の育児情報も、どちらも“参考程度”にしておくのがベストだと榎本さんは続ける。

「子どもはひとりひとり、みんな違います。大切なのは、その育児方法が自分の子どもに合っているかどうかを見極め、模索していくことです」

 例えばおばあちゃん世代では、卒乳も、離乳食も、トイレトレーニングも、すべて“早め早め”を良しと考える人が多い。

保育園では、子どもひとりひとりの成長に合わせ、適切な時期を見極めることを大切にしています。トイレトレーニングでも、トイレに行くのを嫌がる子どものおむつを無理に外したりはしません。興味を持ち始めたときが、その子にとって最適なトイレトレーニングの時期。早ければいいわけではないのです」