目次
Page 1
ー 五大路子演じる娼婦ローザ
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ー 大人が信用できなくなった子供時代
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ー ビンタされてなお貫いた女優への道 ー 看板女優の演技を見て「ここが私の生きる道だ」
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ー テレビの前で喜ぶ父の姿 ー 国民的女優から暗転、役者人生の危機に
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ー 原因不明の膝痛で降板
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ー 伝説の娼婦・ハマのメリーさんに導かれて
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ー 大歓声に沸いたニューヨーク公演
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ー 地元・横浜で夢を紡ぎ、発信し続ける
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ー 仲間の支えもあって横浜夢座結成24年

 真っ白に塗られた肌に太く黒々としたアイライン、結い上げた白髪、曲がった腰で着こなす純白のドレス。実在した老娼婦・ハマのメリーさんをモデルに描く一人芝居、『横浜ローザ』の幕が今年も上がる。演劇を通し平和を伝えてきた女優・五大路子さんは、この舞台を「ライフワーク」と言ってはばからない。ウクライナで戦火の広がる今、伝えたい「戦争で青春をちょん切られた」女たちの物語とは―。

 五大路子さんが娼婦の役を演じる。しかも一人芝居で。モデルは伝説となっている「ハマのメリーさん」─。そんな話を聞いて、私が『横浜ローザ』を見に出かけたのは1996年のことだった。

五大路子演じる娼婦ローザ

 五大さんといえば、美形で、NHK連続テレビ小説『いちばん星』で主役を演じたキャリアから正統派のイメージが強かった。しかし幕が上がると、娼婦をせざるをえなかったこと、恋した男もその息子も戦争に巻き込まれてしまったこと─。過酷な経験がローザによって語られ、戦争が、いかに人生をズタズタにしてしまうか訴えかけてきた。

 ただ、この芝居からいちばん伝わってきたのは、どんな悲惨な状況に置かれても「生き抜く力」だった。

「あなたの娼婦はキレイすぎるんだよ」

 五大さんはそう評価されたことがあったという。しかしむしろドロドロとしていないからこそ、戦争の悲惨さが伝わってきた。時々、おどけたり、冗談を言ったりすることで、したたかに生きるローザの姿が浮き彫りになった。

 初演から27年がたった。その間、コロナによる中止以外はほぼ毎年、再演されてきた。

 なぜ五大さんは『横浜ローザ』を演じ始めたのか。その人生をたどると、幾度も生きる気力を失いそうになりながら、女優としての危機に直面しながら、それを乗り越えての答えだったことが垣間見える。