業界人からのタモリの評価「任された仕事はきっちりやってくれる」

 田辺エージェンシーには永作博美(52)らも所属するが、筆頭タレントはタモリ。同社からは昨年末、堺雅人(49)が独立したものの、田邊氏とタモリの歴史の長さ、関係の深さとは比較にならない。

タモリ倶楽部』は視聴率を狙っているようには見えない番組だったが、それでもタモリの人気と、ほかの番組にない個性的な内容で2000年代までは世帯視聴率が10%を超えることもあった。

 だが、ここ数年は深夜番組が乱立したこともあり、視聴率は個人1.5%強(世帯3%)程度を推移していた。それでも良い数字なのだが、内容がマニアックであることやタモリとの年齢差のためか、若い視聴者の個人視聴率がやや低かった。

 テレ朝は終了発表時に「番組としての役割は十分に果たした」と声明したが、本音に違いない。タモリ側もやり尽くした思いだったのではないか。なにしろ40年だ。共同制作なのだから、終了はテレ朝と田辺エージェンシーの合意の上で決められているはずだ。

 タモリ自身は最終回で「40年間本当にありがとうございました」と頭を下げたものの、過去の述懐や心残りの言葉は一切なし。あっさりとしたものだった。

『ブラタモリ』の場合、仮にタモリが年齢による体力低下などを理由に継続に消極的になったとしたら、NHK側が対応策を考えれば済む話なのである。具体的にはタモリの1日の移動距離や撮影時間を減らすなどの方法が考えられる。極端な話、ロケに出るのは隔週にしたっていいのだ。スタジオ出演のみの週を設けることも可能だ。

『ブラタモリ』は高視聴率を続けているNHKの看板番組。東京・下北沢を探訪した4月22日放送は視聴率が個人6.3%(世帯11.1%)に達し、激戦区の土曜午後7時台で断トツの数字を記録した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。同局は番組の存続に全力を上げるだろう。

 4月末には『ブラタモリ』の元プロデューサー・山名啓雄専務理事(56)が、報道と制作の指揮官であるメディア総局長に就任した。宿泊の伴うロケに一緒に行っていたこともあり、タモリとは昵懇(じっこん)の間柄である。山名氏はなるべくタモリに負担を掛けないよう考えるだろうし、タモリも山名氏が現場のトップになった年に降りようとは考えないのではないか。

 テレ朝で『タモリ倶楽部』の当初の責任者だった元同局取締役制作局長の故・皇達也氏はこう語っていた。

タモリさんと付き合った人なら誰でも同じことを言うでしょうが、彼には欲というものが一切ない。お金についてだけでなく、仕事面もそう。任された仕事はきっちりやってくれるものの、自分を売り込むようなことは決してしない。自分から番組を続けたいとか降りたいとかも言わない」(皇氏)

 タモリは淡々とした人なのである。

 振り返ると、2014年3月の『笑っていいとも!』の終了時もそうだった。出演者が悲しみ、視聴者から惜しむ声が続々と上がる中、本人は平然としていた。観る側が拍子抜けするほどだった。

『ブラタモリ』も『ミュージックステーション』も淡々と続けるのだろう。また、77歳という点ばかり注目されるが、伊東四朗は85歳の今も俳優として刑事を演じ、警察署長などを演じている北大路欣也は80歳、草野仁アナも79歳で現役を続けている。

 タモリの年齢を周囲が気にするのは早いのではないか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。